プロフィール

  • 越前敏弥
    文芸翻訳者。 ご感想・お問い合わせなどは office.hyakkei@gmail.com へお願いします。
無料ブログはココログ

« 2019年12月 | トップページ | 2020年2月 »

2020年1月

2020年1月27日 (月)

〈9人の翻訳家〉の結末について

 映画〈9人の翻訳家 囚われたベストセラー〉が公開されました。
 この映画が作られた背景については、前回のこの記事を参考にしてください。
 ここまでのところ、観た人の評判は非常によく、二転三転する仕掛けにみごとにだまされる極上のミステリーという評価が大半であるようです。
 大仕掛けだけでなく、細かい部分についてもさまざまな伏線や含意が組みこまれていて、おそらく一度観ただけではすべてを見抜くことはできない作品なので、ぜひ二度、三度と観ていただきたいです。
 ところで、この映画の終盤に、謎解きの一環としてアガサ・クリスティの某有名作品の内容が関係してくる個所があります。その個所がどういうことなのか、わたしは数回観ても確信が持てず、試写を観たある書評家のかたと話したところ、そのかたも2回観たうえでご自身の解釈を教えてくださったのですが、それはわたしの解釈とまったく異なるものでした。
 気になったので、配給会社を通じて、その点についてこの作品のレジス・ロワンサル監督に質問したところ、なんと、その回答はわたしの解釈とも書評家のかたの解釈ともちがっていました。ただし、監督によると、これにはいろいろな解釈が成り立つので、われわれのどちらもまちがいというわけではないとのことでした。ひょっとしたら、この3つ以外の解釈もありうるのかもしれません。
 そのことについて書くにあたっては、この映画の結末、そしてそのクリスティ作品の結末を両方明かさざるをえないので、下にリンクを張って、そこにファイルを入れます。映画〈9人の翻訳家〉を観て、かつ、そのクリスティ作品の犯人を知っている人だけ、ご覧ください。【ネタバレ注意】 

ダウンロード - 920translators.pdf

 この個所だけでなく、映画〈9人の翻訳家〉は、ミステリー好きの人、海外文学好きの人、そして翻訳という仕事に興味がある人、いずれもが楽しめるディテールが満載の作品です。また、そのクリスティ作品やダン・ブラウン作品を読んでいなくても、まったく問題ありません。ぜひご覧になって、見終わった人と感想を語り合ってください。

2020年1月18日 (土)

INFORMATION 2010-01-18

 今月27日(月)の夜20時30分ごろから21時ごろのあいだに、ヒューマントラストシネマ有楽町で、フランス映画〈9人の翻訳家〉上映後に、この映画の字幕翻訳を担当した原田りえさんとの対談トークがあります。この映画は、ダン・ブラウン『インフェルノ』の刊行当時にヨーロッパの翻訳者たちが半ば監禁されて翻訳作業をおこなった出来事がもとになっています(映画では情報漏洩と恐喝が描かれますが、その部分は完全なフィクション)。今回、わたしは推薦コメントやプログラム用の解説記事を書いたり、金原瑞人さん・平岡敦さんとの座談会に登場したり、さまざまな形で協力しています。

9人の翻訳家〉はミステリー映画としても非常に凝った作りで、まちがいなく二度、三度と観たくなる傑作です。ご都合のよいかたはぜひ27日のその回にお越しください。わたし自身が実際に監禁されそうになった話や、5カ国語以上をこなす原田さんの翻訳技巧の話、さらにはミステリーとしての魅力などにふれるつもりです。正確な時間帯がわかりましたら、ここに追記します。

【1月21日追記 27日の夜の回は18時40分開始です。その回は予告上映がなく、原田さんとのトークは20時30分ごろから約30分間の予定です】

 

――――――――――

 このあとの朝日カルチャーセンターでの対談や公開講座の日程は以下のとおりです。

 

だから翻訳は面白い 英語にしづらい日本語、日本語にしづらい英語

 2月1日(土)15時30分から17時 朝日カルチャー新宿

・ジャパンタイムズ Alpha 編集長・高橋敏之さんとの対談。『この英語、訳せない!』刊行記念トークの締めくくりとして、以前 The Da Vinci Cod(『ダ・ヴィンチ・コード』のパロディ本)についての連載コラムのころに担当してくださった高橋さんとお話しします。これまでわたしが訳してきた作品や Alpha の記事などをもとに、まちがいやすい英語表現を具体的に紹介しつつ、お互いの体験談を紹介できたらと思います。翻訳学習者だけでなく、語学に興味のある人ならぜひご参加ください。予習不要です。

 

◎文芸翻訳教室・英語と日本語のはざまで

 1月25日(土)10時30分から12時 朝日カルチャー中之島

 3月7日(土)15時30分から17時 朝日カルチャー新宿

 3月14日(土)15時30分から17時 朝日カルチャー横浜

・各教室で3か月に1度開催している公開講座。毎回内容が異なり、「英米小説の翻訳」クラスのオリエンテーションも兼ねています。今回は「誤読しやすい英文」「中級者3人の訳文検討」「『アナと雪の女王』翻訳秘話(後編)」の3つを扱います。予習不要です。

 

「英米小説の翻訳」(要予習)の内容や日程についてはここを見てください。途中からの参加も可能です。

 

――――――――――

 ないとうふみこさんとの共訳でつづけてきた〈アナ雪3部作〉の最後を飾る『小説 アナと雪の女王2』が角川文庫から刊行されました。映画第1作に基づく『小説 アナと雪の女王』、ふたつの映画をつなぐオリジナルストーリー『小説 アナと雪の女王 影のひそむ森』とともにぜひ楽しんでください。

1 321907000752-1 81xbjb78t6l

――――――――――

この英語、訳せない!』刊行に合わせて作成した動画「この英語訳せない! 特別編」の販売サイトはこちら。YouTubeのサンプル動画はこちらで視聴できます。「日本人なら必ず誤訳する英文・決定版 特別編」など、ほかのものはこちらにあります。

 

2020年1月 6日 (月)

2020年の予定など

 今年もどうぞよろしくお願いします。

 

 今年はまず、今月中旬に『小説 アナと雪の女王2』(ないとうふみこさんとの共訳、角川文庫)が刊行されます。すでに出ている『小説 アナと雪の女王1』『小説 アナと雪の女王 影のひそむ森』と合わせて楽しんでください。『1』『2』は映画のノベライゼーションで、『影のひそむ森』はふたつの映画のあいだに起こった出来事を描いたオリジナル書きおろし小説です。大人が読んでもじゅうぶん堪能できる作品です。

 そのあと、今年は1950年代アメリカ作家のアンソロジーや映画のストーリー技術書などを翻訳刊行する予定です。そのほか、いくつかの古典新訳や子供向けミステリーなどを準備していますが、そのうちどれかを今年じゅうに出せるかもしれません。

――――――――――

 昨年末に作った動画「この英語、訳せない!」特別編もよろしくお願いします。ジャパンタイムズから出た『この英語、訳せない!』に準拠して説明した動画(50分程度、500円)で、本との内容の重複はほとんどありません。7分間の無料サンプル版はここ。くわしい内容についてはこの記事を見てください。12月に名古屋と東京で開催したトークイベントとほぼ同じなので、参加できなかった人やほかの地域のかたはぜひどうぞ。

 以前から販売している「日本人なら必ず誤訳する英文・決定版」特別編については、ひとつの動画にまとめたもの(130分程度、1,000円)の販売を開始しました。無料サンプル版はここ

 すべての動画はこのサイトにまとまっています。ダウンロード30日間という表記がわかりにくいのですが、申込から30日間ダウンロードという意味であり、いったんダウンロードしたものは無期限で視聴できます。

――――――――――

 今月から来月にかけてのトークイベントは以下のとおりです。

1月17日(金) 橋本美穂さん(通訳者)と対談@三省堂神保町本店

1月25日(土) 文芸翻訳教室・英語と日本語のはざまで@朝日カルチャーセンター中之島教室

1月26日(日) はじめての海外文学スペシャル in 大阪@蔦屋書店梅田

2月1日(土) 高橋敏之さん(ジャパンタイムズ Alpha 編集長)と対談@朝日カルチャーセンター新宿教室

 朝日カルチャーセンターのそのほかの講座については、ここにまとまっています。いまからでも申込可能ですが、講座によっては予習教材の関係で途中参加になります。各教室にお問い合わせください。

――――――――――

 今年も去年と同様、「文芸翻訳教室」特別勉強会を開催します。今年は1回だけの開催で、東京は3月19日(木)の夜と3月24日(火)の午前。大阪は4月24日(金)の夜。去年とは異なる内容で、今回は朝日カルチャーの現役受講生も含めて、どなたでも参加できます。くわしくは後日お知らせします。

――――――――――

 NHK基礎英語2のテキストでリレー連載している翻訳者による海外作品紹介記事は、好評のため、同じメンバー6人(越前敏弥→芹澤恵→金原瑞人→ないとうふみこ→白石朗→三辺律子)で継続します。

 また、今春から、中級程度の英語学習者でも読みやすい原書紹介(訳書が出ていても可)のネット記事を月に1回書くことになっています。

 その他、はじめての海外文学、読書探偵作文コンクール、全国読書会めぐりなどを、例年どおり時間があるかぎりつづけていきます。

 今年もどうぞよろしくお願いします。

« 2019年12月 | トップページ | 2020年2月 »