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  • 越前敏弥
    文芸翻訳者。 ご感想・お問い合わせなどは office.hyakkei@gmail.com へお願いします。
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2019年12月

2019年12月31日 (火)

「この英語、訳せない! 特別編」

 先日ジャパンタイムズ出版から出た著書『この英語、訳せない!』に準拠した動画「この英語、訳せない! 特別編」を作りました。

 オフィス翻訳百景の販売サイトで、500円で購入できます。サイトの説明がちょっとわかりにくいのですが、ダウンロード後は無期限で視聴できます(「30日間」と書いてあるのは、購入後30日以内にダウンロードする必要があるという意味です)。

 内容は以下のとおりです(50分弱)。

・ back は背中でいい? hipは尻でいい?
・『ダ・ヴィンチ・コード』のパロディ本を使ったことば遊びの翻訳
・「政治的に正しすぎる」クイズ
・『大統領失踪』から、脚韻をあえてぎこちなく訳す

 「この英語、訳せない! 特別編」 では、このほかにも、本に載せきれなかった「翻訳しづらい英語表現」「意味を取りちがえやすい英語表現」をいくつも紹介しています。

 よかったら、まず無料のサンプル版(7分余り)を YouTube で見てください。特別編動画の内容は、このサンプル版とも本自体ともほとんど重複しません。

 ご覧になるのは、『この英語、訳せない!』の本を読む前でも、読んだあとでも、どちらでも問題ありません。

 ぜひご視聴ください。販売サイトはここです。

 

 以前から同じサイトで販売している「日本人なら必ず誤訳する英文・決定版」特別編のまとめバージョン(130分)も作りました。これまで購入してくださった全員がセット販売の形だったので、そのようにしたしだいです。合わせてどうぞ。分割版は近いうちに削除する予定です。無料サンプル版はここで視聴できます。

 オフィス翻訳百景の動画販売サイトのホームはここです。

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2019年12月16日 (月)

INFORMATION 2019-12-16

 先月末に出た新刊『この英語、訳せない!』(くわしい内容はこちら)の刊行記念トークイベントに来てくださったみなさん、ありがとうございました。

 このあとは年明けにふたつ対談があります。お相手はどちらも英語の達人で、充実した内容になるのはまちがいありません。ぜひお越しください。

1/17 夜  三省堂神保町本店(通訳者・橋本美穂さんと対談)
2/1 午後 朝日カルチャー新宿教室(ジャパンタイムズ Alpha 編集長・高橋敏之さんと対談)

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 朝日カルチャーセンター(新宿・横浜・中之島)の1月期文芸翻訳講座については、この記事にまとめてあります。

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 角川文庫から、『小説 アナと雪の女王』につづいて、オリジナルストーリー『小説 アナと雪の女王 影のひそむ森』がまもなく刊行されます。大ヒットした映画〈アナと雪の女王〉と現在公開中の〈アナと雪の女王2〉のあいだをつなぐ話で、シリーズのファンのかたにとっては必読の作品です。ぜひ手にとってみてください。

 公開中の映画に基づいた『小説 アナと雪の女王2』の刊行は年明けになる予定です。

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 今年の読書探偵作文コンクールの最優秀賞作品の全文が公開されています。いわゆる感想文とはひと味違う独創的な文章をぜひ楽しんでください。参加者全員にクリアファイルを送りました。来年もご応募をお待ちしています。
小学生
中学生
高校生
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《ビジネス現代》の関連サイト(「マネー現代」)に、英語教育に関する文章を寄稿しました。記事はここにあります。

2019年12月 2日 (月)

『この英語、訳せない!』刊行

 ジャパンタイムズ社から著書『この英語、訳せない!』が刊行されました。

 訳しづらい、あるいは意味をとりちがえやすい英語表現と、その文化的背景などを軽いエッセイ風にまとめたもので、自分自身の訳文も含めて、多くの翻訳書から実例を紹介しています。

 ここでは、まえがきと目次を紹介します。

【まえがき】

 みなさんもご存じのとおり、英単語と日本語の単語は、A=Bのように意味が1対1で対応するとはかぎりません。それどころか、ぴったり決まることはむしろ珍しく、1対多もあれば、多対1、多対多であることもよくあり、さらに言えば、1対0、つまりその英語表現に相当する日本語が存在しないと言わざるをえないケースにもときどき出くわします。異なった歴史を持つ異なったふたつの言語なのですから、それは当然のことです。
 翻訳の仕事をしていると、よい訳語が頭に浮かばなくて先へ進めなくなることが1日に何度もありますが、その何割かは上のような困った単語や表現にぶつかってしまった場合です。そして、あれこれ考えたり調べたりを繰り返しているうちに、頭のなかに(あるいはパソコンのなかに)自分なりのデータベースができている翻訳者も多いでしょう。
 この本では、わたしが日ごろの仕事で少しずつ身につけてきた「訳せない英語の訳し方」をできるかぎり紹介します。それぞれの項目を書き進めるにあたっては、ネイティブスピーカー10人余りや翻訳クラスの受講生多数の意見を参考にし、具体例として、自分自身も含めた多くの翻訳者の訳文もいっしょに載せました。訳しにくさの根底にあるものとして、「いくつもの意味を持つ」「文化のちがい」「言語構造のちがい」という3つの要因を考え、それに基づいて章を分けましたが、現実には2つ、あるいは3つすべてにまたがるものも少なくありません。そんなこともあり、この本のどこから読んでもらってもいいと思っています。
 多少とも外国語や海外の文化に興味を持っている人なら、だれでも楽しんでもらえるように書いたつもりです。むずかしい英語表現が出てきたときは、気軽に読み飛ばしてもかまいませんが、辞書を引いたり画像を調べたりしながら読んでもらうと、より多くのものが身につくでしょう。
 厄介ではあるけれど、楽しくて奥深い「翻訳できない英語」の世界へようこそ。

 

【目次】

Chapter1 いくつもの意味をもつことば

1.brother, sister 姉か妹か、それが問題だ
2.young, old 若いのにold man?
3.khaki 幅の広い「カーキ色」
4.dark, fair 美男の条件、darkとは
5.mop hair ジャスティンもトランプもモップヘア?
6.sorry いつも悩ましいsorry問題
7.enjoy 「楽しむ」ではピンとこない
8.possibility 複数形になったら要注意
9.integrity 訳語がビシッと決まらない
10.head 頭?顔?首?
11.mind 感情より知性に近い
12.enterprise もとにあるのは冒険心
13.irony 二面性こそが本質
14.politics, policy politicsは「政治」じゃない?
15.discipline 「みずからを律する」が基本概念
16.train, car, carriage, bus 乗り物あれこれ
17.water 「熱い水」って?
18.oak 「カシの木」が減った理由
19.text いつの間にか動詞に?
20.value 「価値観」にも「価値要素」にもなる
21.technically 「技術的」とはかぎらない
22.insight 「洞察」では硬すぎる
23.badly 時代とともに意味が変わる
24.arguably 正か誤か、まぎらわしい
25.philosophy 哲学的に肩をすくめる?
26.facsimile ずっと昔からあったわけじゃない
27.hopefully 教養の有無がわかる?
28.evening 夕方か、夜か
29.available デートの誘いにも使える便利なことば
30.commit 1語では訳しきれない
31.driveway 「ドライブウェイ」って、どんな道?
32.hall 玄関もあれば、市役所もある
33.purse 動詞にもなるpurse
34.shy 恥ずかしくないshyもある
35.happy 楽しくないhappy
〈コラム〉 copyと「コピー」のちがい

Chapter2 文化のちがいによる訳しにくさ

1. 度量衡で示す訳者の考え
2. 日本の高1は10年生
3. 警察の役職いろいろ
4. 弁護士には何種類もある
5. floor leaderって、どんな人?
6. 7色じゃない虹もある
7. 「トレーナー」は日英米で別物
8. ローマ教皇は森に住んでいるか?
9. 楽しいのか、楽しくないのか
10. いつの間にか2階が3階に?
11. 目を細めるのはどんなとき?
12. ところ変われば虫の名も変わる
13. condescend はいい意味?悪い意味?
14. vice presidentはえらい人?
15. ドアの開閉にご注意を
16. 慣用表現の対処法1 あえてそのまま
17. 慣用表現の対処法2 少し補う
18. 慣用表現の対処法3 なすすべなし?
19. 「プリン」の仲間たち
20. 「お茶」じゃないtea
21. tartは「おまんじゅう」?
22. 英米で異なるcornの正体
23. まぎらわしい魚の名前
24. curtsyは女王のやさしさ
25. 挨拶ひとつがむずかしい
26. 政治的に正しすぎると…
27. 12歳はteenagerではない?
〈コラム〉 counterpartは変幻自在

Chapter3 言語構造の違いによる訳しにくさ

1. 英語の何倍もある一人称
2. 訳文へにじみ出る複数形
3. beforeはときに「あと」になる?
4. 翻訳者泣かせのthousands
5. 学、学、学、……
6. 「~的」だらけはご勘弁
7. orの奥深さ
8. どっちが先?
9. 縦横無尽
10. 日本人の苦手な否定疑問文
11. 目立ちすぎる符号たち
12. イタリック体が使われる理由
13. 頭韻を見ると血が騒ぐ!?
14. 脚韻を見ても血が騒ぐ!?
15. 簡潔に訳したいけど…
16. だれだって言いまちがえる
17. 誤解されがちなことわざ
18. 稀代の名訳者
19. 奔放なる「離れ業」
〈コラム〉 すでに「セレンディピティ」が定着?

 

 この本の刊行を記念してのトークイベントや対談が、以下のように決まっています。ぜひお越しください。

12/8 午前 ウィンクあいち(単独)
12/10 夜  紀伊國屋新宿本店(単独)
1/17 夜  三省堂神保町本店(通訳者・橋本美穂さんと対談)
2/1 午後 朝日カルチャー新宿教室(ジャパンタイムズ Alpha 編集長・高橋敏之さんと対談)

 

【12月8日追記】

 本文中で誤った記述が2か所見つかりました。申しわけありません。重版の際には、以下のようにかならず訂正します。ご指摘くださったかた、ありがとうございました。

 

・p157 Chapter 3 第13項 頭韻の例2行(アンダーラインの位置を訂正)

 異の土愛にられ、うとう士たちがちあがる

        ↓

 異の土愛に駆られ、とうとうたち立ちあがる

 

・p158 Chapter 3 第14項 本文2行目

"Intel Inside" という広告コピー(頭韻)が日本語では「インテル、はいってる」という脚韻として訳されたことを知っている人は多いでしょう。

        ↓

有名な“Intel Inside” という広告コピー(頭韻)は、実は日本語の「インテル、はいってる」が先に作られ、それが好評だったので英訳されたものだそうです。

―――――

日本人なら必ず誤訳する英文・決定版』刊行に合わせて作成した動画「日本人なら必ず誤訳する英文・特別編」の販売サイトはこちら。YouTubeのサンプル動画はこちらで視聴できます。

 

 

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