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  • 越前敏弥
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2019年2月22日 (金)

INFORMATION 2019-02-22

『世界史大図鑑』(三省堂)が刊行されました。一昨年の『世界文学大図鑑』につづいて、翻訳を担当しています。日本で教わる「世界史」ではまったく採りあげられない項目もかなりあり、読み応えはじゅうぶんです。中学生以上の全世代にお勧めします。

 この本の訳者あとがき全文をここに転載します。

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 大図鑑シリーズの翻訳を担当するのはこれが2回目だ。かつて『世界文学大図鑑』を翻訳したことが楽しく貴重な経験となったので、つぎは『世界史』の刊行企画があるという話を担当編集者から聞いたその瞬間、みずから志願した。

 学校時代に世界史を学んでから40年近くになるが、翻訳の仕事で必要になる機会も多く、ときどき新しい教科書を入手して目を通すようにしてきた。そうしたなかで、教科書の記述は少しずつ変化した。「地理上の発見」は「大航海時代」に、「オスマン・トルコ」は「オスマン帝国」になり、中南米や東南アジアやアフリカの記述がずいぶん増えた。事件の呼び名や人名・地名も微妙に変わったものが多く、現地での呼称や原音、そして少数派や抑圧された民族・国家の立場が尊重される傾向が強くなっている。おおむね、客観的で公平な記述に近づこうとしていると言ってよいだろう。

 だが、監修者の後記にもあるとおり、時代や地域を問わず、客観的な歴史というものは存在しない。もともとイギリスで出版された本書が、東洋やアフリカの記述が控えめである一方で、プラハ窓外放出事件やパッシェンデールの戦いなど、初耳の人が多いであろう出来事を大きく扱っているのを見ると、世界にはいくつもの「世界史」があるのだと痛感する。日本の教科書と比べ読みすれば、きっと立体的な見方が得られるはずだ。

 わたしが最も強く感じたのは、ヨーロッパでファシズムが蔓延していく過程や、それにともなう数々の残虐行為が、執拗なまでに細かく描かれていることだ。二度と過ちを犯してはならないという強烈なメッセージが感じられ、ぜひ日本の読者にも知ってもらいたいと思った。また、同時多発テロ以降の世界の諸問題(IT社会、リーマン・ショック、環境問題、人口問題など)が深く論じられているのも読み応えがある。もちろん、豊富な図版を用いてさまざまな切り口でわかりやすく解説してあるのは大図鑑シリーズの他巻とまったく同じであり、期待をけっして裏切らないとお約束する。

 訳出にあたっては、唐木田みゆき、笹田元子、笹山裕子、手嶋由美子、中田有紀、信藤玲子、茂木靖枝、山田文の各氏に協力してもらった。引用文・発言の下調べや歴史的事実の正誤確認など、膨大な量の作業の積み重ねがなければ、こういった書物の翻訳はとうてい不可能である。この場を借りてお礼を申しあげる。

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 3月に東京と大阪で開催する『文芸翻訳教室』特別勉強会は、東京(午前、午後)、大阪のいずれも、残席があと3名程度となっています。
 予習が必要なので、参加を希望する人は遅くとも2月末までに申しこんでください。
【2月27日追記 大阪勉強会は満席となりました】
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 3月13日(水)の夜に、青山ブックセンターで夏目大さんとトークイベントをおこないます。大ヒット中の『タコの心身問題』と、タコの悪役が大活躍する『おやすみ、リリー』の話を中心に、出版翻訳にまつわるいろいろな話をします。ぜひお越しください。

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 朝日カルチャーセンターの文芸翻訳講座(新宿・横浜・中之島)は、すでに4月期の受付がはじまっています。詳細については、来週あたりこのブログに書きます。
 3月の一般講演「翻訳百景・英語と日本語のはざまで」は、引きつづき受付中です。

 新宿   3月2日(土)  15:30~17:00
 横浜   3月9日(土) 15:30~17:00

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