プロフィール

  • 越前敏弥
    文芸翻訳者。 いまのところ、更新は週1、2回程度です。 ご感想・お問い合わせなどは office.hyakkei@gmail.com へお願いします。
無料ブログはココログ

« INFORMATION 2017-01-27 | トップページ | 『翻訳百景』刊行1周年+「なんのために学ぶのか」全文掲載 »

2017年2月 5日 (日)

「映画日和、翻訳日和」+日活ロマンポルノ・マイベストテン

 きのう、朝日カルチャーセンター新宿教室で、中田秀夫監督との対談「映画日和、翻訳日和」がおこなわれました。おそらく翻訳に興味のある人と映画に興味のある人が混在する形で、広めの部屋がほぼ満席となり、7割程度が女性でした。来てくださったみなさん、ありがとうございました。 

 中田監督と出会った蓮實映像論ゼミや同人誌《映画日和》(もちろん小津安二郎の〈秋日和〉から採ったもの)の話を皮切りに、中田監督のイギリス留学時代、ハリウッド時代、そして帰国後の話から最新作〈ホワイトリリー〉(2月11日公開)の話まで、いくつかの動画を交えて、盛りだくさんの内容でしたが、用意していた話の半分ぐらいしかできなかったのがちょっと残念です。 

 翻訳者としては、中田監督の唯一の訳書『追放された魂の物語 映画監督ジョセフ・ロージー』のことや、〈ホワイトリリー〉の英語版字幕を担当なさった蔭山歩美さん(参加者として客席にいらっしゃいました)からのお話を聞けたのも大きな収穫でした。 

  〈ホワイトリリー〉のあたりでは、昨年末からの日活ロマンポルノ・リブートの総括や今後の展望の話もしたかったのですが、あまりできなかったのが心残りなので、旧ロマンポルノのマイベストテンのことをもう少しだけ書いておきます。自分は10代の後半からずっと、旧ロマンポルノの作品を浴びるように観て育ち、それがいま湧き出ることばや文章(もちろん翻訳も含めて)の核のひとつだと信じているし、誇りにも思っているからです。

「20170204.pdf」をダウンロード

 上のファイルはきのう配布した資料3枚で、1枚目が中田監督のプロフィールとフィルモグラフィー、2枚目が越前のプロフィールと著訳書リスト、そして3枚目が両者が選んだロマンポルノ10本です。中田監督の10本は、コメントも含めて、昨年出た《映画芸術》457号から転載させてもらいました。

 わたしが選んだ10本は、マイベストテンではありますが、以下の3つの条件で選んでいます。

 (1)1監督1作

 (2)中田監督が選んだ作品と重複しない

 (3)なるべくロマンポルノ初心者向き

【中田秀夫が選ぶロマンポルノ10本】(《映画芸術》457号・2016年夏)
生贄夫人('74 小沼勝)
  『雨月物語』の森雅之のような雰囲気を要求された坂本長利さんに。
発禁本「美人乱舞」より 責める!('77 田中登)
  雪原に長時間吊るされ、田中登を包丁で追いかけた宮下順子さんに。
女地獄 森は濡れた('73 神代辰巳)
  そのアナーキーイズムから、日活に一週間未満で、上映を諦めさせたことに。
天使のはらわた 赤い教室('79 曾根中生)
  水原ゆう紀さんの極上の「白痴美」に。
おんなの細道 濡れた海峡('80 武田一成)
  シビレさせられる挿入歌に。
箱の中の女 処女いけにえ('85 小沼勝)
  逃げた女優を捜索に、横田基地に行った青春の思い出に。
恋人たちは濡れた('73 神代辰巳)
  映写機が止まり、フィルムが萌える場面で、この映画が燃えた文芸地下に。
濡れた荒野を走れ('73 澤田幸弘)
  反ベトナム戦争の思想に。
㊙色情めす市場('74 田中登)
  田中さんの魂に。
闇に抱かれて('82 武田一成)
  アントニオーニふう、イタリア映画の香りに。

【越前敏弥が選ぶロマンポルノ10本】
鏡の中の悦楽('82 西村昭五郎)
狂った果実('81 根岸吉太郎)
ラブホテル('85 相米慎二)
一条さゆり 濡れた欲情('72 神代辰巳)
ピンクサロン 好色五人女('78 田中登)
夢野久作の少女地獄('77 小沼勝)
㊙女郎市場('72 曾根中生)
桃尻娘('78 小原宏裕)
赤いスキャンダル・情事('82 高林陽一)
もっとしなやかに もっとしたたかに('79 藤田敏八)
番外 ドレミファ娘の血は騒ぐ('85 黒沢清)

 わたしが選んだリストについて、少しだけ補足解説をさせてもらいます。

・いちばん上の3作は、いつ選んでもかならず入れる「不動のベスト3」。たいがいベストワンにする「鏡の中の悦楽」についてかつて書いた文章はこれ。日活ロマンポルノ史上最も多くの作品を監督した西村昭五郎と最も多くの脚本を書いた桂千穂のコンビによる最高傑作だと信じています。

・4作目から6作目については、神代・田中・小沼作品のなかで、ロマンポルノをはじめて観る人に適していると考えるものを選びました。神代作品では〈赤線玉の井 ぬけられます〉、田中作品では〈屋根裏の散歩者〉、小沼作品では〈さすらいの恋人 眩暈〉とどちらにするか、最後まで迷いました。〈ピンクサロン 好色五人女〉は、井原西鶴の原作では5つの独立した話に登場する5人を1か所にまとめて話を展開させるという、いどあきお脚本が冴えに冴えた作品で、日本シナリオ史に残る傑作だと思っています。

・7作目と8作目は、はじめて観る人にはコメディからという手もあるので、特に勧めたい2作を。9作目と10作目は、ほかのジャンルで高く評価された監督たちがロマンポルノでもこんな傑作を撮っている、という代表として選んだつもりです。特に〈もっとしなやかに もっとしたたかに〉は、おそらくいまならR-15指定にさえならない、PG12あたりになる気がし、はじめて観る人にとっては非常にハードルの低い作品だと思います。

・最後は、そもそもロマンポルノとして公開されていないということで番外にしてあります。もともとは別のタイトルで買いとり作品として制作されましたが、おそらくエロティックな部分があまりにも少なかったせいで公開できず、その後、再編集して一般映画として公開されました。

 ここにあげられなかった旧作のなかにも、日本映画史に残る秀作はたくさんあり、また、今回のリブート5作は粒ぞろいの佳作ばかりなので、ぜひ機会があったら上映館に足を運んでみてください。

 ※きのうのトークイベント時に参加者のみなさんにお知らせした非公開のスペシャルイベントに参加したいかたは、 office.hyakkei@gmail.com へ20日(月)までにご連絡ください(折り返しお返事します)。現時点で女性2名から参加表明がありました。この件については、親しいご友人などを誘ってくださってもかまいませんが、SNSやブログなどで不特定多数の人に知らせるのは控えてくださるようお願いします。

« INFORMATION 2017-01-27 | トップページ | 『翻訳百景』刊行1周年+「なんのために学ぶのか」全文掲載 »

新刊・イベント・講座情報」カテゴリの記事