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  • 越前敏弥
    文芸翻訳者。 いまのところ、更新は週1、2回程度です。 ご感想・お問い合わせなどは office.hyakkei@gmail.com へお願いします。
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2016年2月

2016年2月29日 (月)

3日間連続トークイベントの報告

 先週末の25日から27日にかけて、東京・大阪・京都で『翻訳百景』と文庫版『インフェルノ』の刊行記念トークイベントをおこないました。3会場ともほぼ満席で、合わせて200名近くのかたが参加してくださっています。ありがとうございました。簡単にレポートを書きます。 

 25日(木)には、いつもの表参道の会場に(株)KADOKAWA 文芸・ノンフィクション局局長の郡司聡さんをお招きしての対談形式で、第16回翻訳百景ミニイベントを開催しました。郡司さんはかつて角川書店で翻訳書の編集を長くなさっていて、ダン・ブラウンの『天使と悪魔』『ダ・ヴィンチ・コード』の版権を取得したときには海外フィクション部門の取りまとめ役でいらっしゃいました。そのときのさまざまないきさつについては『翻訳百景』にも少し書きましたが、当日はわたし自身も知らなかった話をずいぶんうかがうことができました。 

 ダン・ブラウン作品にかぎらず、翻訳書を世に出していくまでの過程を翻訳者と編集者の両方の立場からかなり深く具体的に説明することができ、これまでの翻訳百景ミニイベントとはいくぶんちがう雰囲気の会になったかもしれません。今回は事前に集まった質問がかなり多く、後半は郡司さんとふたりでそれらにお答えしていきました。最後に『翻訳百景』についての感想のお手紙を朗読したのですが、これについては日を改めてまた書きます。 

 イベント後のアンケートや感想メールなどからいくつか紹介します。

・翻訳家のみならず編集者視点での裏話もうかがえて興味深かったです。ディールに参加し、海外まで足を運び、と、骨のある、スピードのいる職業だなと尊敬の念がわきました。翻訳家も編集者も、日ごろからアンテナを張っておく必要があるのだなと感じました。

・『ダ・ヴィンチ・コード』の邦訳出版のお話が特に興味深かったです。ものすごい話題作であるがゆえのプレッシャーや、超ハードスケジュールを乗り越えて出版されたのですね。翻訳者も編集者もそれぞれ全力で取り組んだことが伝わってきて、感動しました。

・『翻訳百景』2冊にサインをしてくださり、ありがとうございました。1冊は知り合いの高校2年男子にプレゼントします。文芸翻訳とはどういう仕事なのかを知ってもらいたいという気持ちからです。おもしろいと思ってもらえそうな気がします。

・1,000人(4ケタ)になれば市場が動く、という非常にリアリティのあるお話に、すごく納得しました。具体的な数字で見えれば、何をやり改善すべきか、いろいろな工夫のしがいがあるように思います。

・イベントの最後に読んでくださったお手紙には深く感銘いたしました。海外文学への愛がひしひしと感じられ、曲がりなりにも翻訳に携わる者としては胸が熱くなりました。微力ながら、わたしも翻訳書をたくさんのかたに手にとってもらえるようがんばりたいと思いました。【同様の内容の人が5、6人いました。お手紙は今週の後半に紹介します】

 
 会場のすぐ下の青山ブックセンター(ABC)本店では、いまも越前の著訳書のフェアを開催してくれています。よかったらお立ち寄りください。
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 次回、第17回翻訳百景ミニイベントについては、3月の中ごろに告知する予定です。 

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 翌26日(金)には、紀伊國屋書店グランフロント大阪店のイベントスペースで、角川新書の編集者・藏本さんが聞き手となる形でのトークイベントがありました。『翻訳百景』の担当編集者であるため、内容の深いところまで言及した話になり、折にふれて前日に郡司さんがおっしゃっていたことを紹介しました。 

 この日は最前列にすわっていた人たち全員が初参加のかたで、しかも全員が質問をしてくださるという、うれしい展開となりました。質問はダン・ブラウンのデビュー作『パズル・パレス』のことや英語教育全般のことなど、多岐に及び、自分にとっても有意義な時間となったと思います。

 27日(土)には、京都のイベントスペース amu KYOTO で話をしました。この日は、翻訳ミステリー京都読書会世話人の宮迫さんが聞き手となり、前半はおもに『翻訳百景』の内容についての対談、後半はプロジェクターを使ってのダン・ブラウン作品の解説をおこないました。 

 和室での打ち解けた会だったこともあり、最初から参加者のかたとやりとりをしながらの楽しい時間を過ごせました。終了後は全員でテーブルを囲んでの懇親会がありました。この日の様子はここでくわしく紹介されています。

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 3日間、楽しくてあっと言う間に過ぎたような気がします。参加者の皆さん、告知に協力してくれた皆さん、ありがとうございました。

2016年2月24日 (水)

朝日カルチャーセンター4月期の翻訳講座

 朝日カルチャーセンター東京・新宿教室と大阪・中之島教室の2016年4月期の翻訳講座の申しこみ受付がはじまりました。  

 東京・新宿教室についてはこのページ、大阪・中之島教室についてはこのページで、フリーワード検索に「越前 敏弥」(あいだにスペースが必要)と入れてもらえれば、4月期の全講座が表示されます。 

 新宿教室も中之島教室も、「文芸翻訳のツボ」と「英米小説の翻訳」の2つのクラスがあります。今期から新宿教室の「英米小説の翻訳」が土曜午後と火曜午前の2クラスになります(同内容)。また、「文芸翻訳のツボ」の時間帯が変わります

 

「文芸翻訳のツボ」は1回きりのオリエンテーションクラスで、小説を中心とする文芸翻訳を手がけるにあたって留意すべきことをざっと学びます(1回しか受講できません)。 予習教材はまったくありません。教材は当日配り、その場でいっしょに考えていきます。空きさえあれば、直前の申しこみでもだいじょうぶです。東京では毎期、大阪では2期に1回程度開講します。  

「英米小説の翻訳」は、東京は1時間半×3回、大阪は3時間×1回の形でおこないます(大阪は扱う英文の長さが約3分の2です)。原則として、長短編小説の一部をていねいに訳し、全員の訳文を全員に配布して細かく検討していきます。4月期は、1月期につづいて、今年の英国推理作家協会(CWA)最優秀長編賞(ゴールド・ダガー)を受賞したマイケル・ロボサムの Life or Death を扱います(銃器や警察などの知識はほとんど不要です)。   

「英米小説の翻訳」は、大阪では、英文の訳読のほかに、毎回指定した本(おもに翻訳書)を読んできて簡単に感想を言ってもらう時間を少しとります。課題書はこのブログの右側に載せてあります。4月期は『YOU』(上下、キャロライン・ケプネス著、白石朗訳、講談社文庫)です。   

 東京では、講座内では感想を言ってもらう時間をとらず、同じ課題書を使って、別枠で非公開・自主参加の読書会をおこないます。これについては、第1回の講座で説明します。  

 越前の講座をはじめて受ける人は、できればまず「文芸翻訳のツボ」を受講してください。ただし、回数が少ないので、可能なら両方を同時に受講することをお勧めします。 

 両クラスとも、『翻訳百景』『日本人なら必ず悪訳する英文』とPDFファイル〈文芸翻訳入門〉が必修教材になっています(当日持参する必要はありません)。〈文芸翻訳入門〉はこの記事からダウンロードしてください。どれも、なるべく受講前に熟読してきてください。

 

 東京・新宿教室の4月期は、4月30日(土)の10時から11時30分まで、「文芸翻訳のツボ」があります(お申しこみはここ)。  

 新宿教室の「英米小説の翻訳」は、今回から火曜午前クラス(10時から11時30分)・土曜午後クラス(12時30分から14時)のふたつになります。どちらか一方を受講してください(内容はまったく同じです)。火曜午前が4月5日、5月31日、6月7日の3回(お申しこみはここ)、土曜午後が4月2日、5月7日、6月4日の3回(お申しこみはここ)です。 

 大阪・中之島教室の4月期は、4月23日(土)の12時30分から14時00分まで、「文芸翻訳のツボ」があります(お申しこみはここ)。   

 中之島教室の「英米小説の翻訳」は、4月23日(土)の14時30分から17時30分までの3時間です(ここ )。  

 今期は東京・大阪とも、一般向け講演「翻訳百景・英語と日本語のはざまで」はおこないません。次回は7月期にある予定です。  

2016年2月20日 (土)

INFORMATION 2016-02-20

【2月23日追記 25日の東京トークイベント、26日の大阪トークイベントは、ともに満席となりました。東京はキャンセル待ち、大阪は立見観覧が可能です】

 ダン・ブラウン『インフェルノ』の文庫版が25日に発売されます。ラングドン・シリーズのほかの作品と同じく、ハードカバーは上下2分冊ですが、文庫は上中下3分冊です。

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 解説は『やさしいダンテ〈神曲〉』(角川文庫)の著者・阿刀田高さんが書いてくださいました。『神曲』にまつわる話を説き起こすだけでなく、ダン・ブラウンのエンタテインメント作家としての本質を鋭く分析しているすばらしい解説です。ハードカバーにあった訳者付記・訳者あとがきもほぼそのまま採録されているので、あわせてお読みください。

 また、映画〈インフェルノ〉の公開日が10月28日となることが正式に発表されました。今回も日米同時公開です。〈ダ・ヴィンチ・コード〉〈天使と悪魔〉と同じ、ロン・ハワード監督、トム・ハンクス主演です。そちらもどうぞお楽しみに。

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 先週出た『翻訳百景』(角川新書)について、すでにブログなどに感想を書いてくださったかたが何人もいらっしゃいます。特に印象に残ったものを3つ紹介します。

・「My Favorite Things and Places」(うっちーさん)

・「under the sky, on the road, at the desk」(伊達淳さん)

・「Pipoの縁側本棚[書影をクリックしてください]」(Pipo@ひねもす縁側さん)

 それぞれ、この本のまったくちがった側面を採りあげてくださっていて、ありがたく読ませていただきました。

 すでにお知らせしたとおり、この『翻訳百景』と『インフェルノ』文庫版の刊行を記念して、3日連続トークイベント&サイン会(すべて参加費無料)をおこないますが、25日の東京は残席わずかなので、参加を希望なさるかたはお早めにお申しこみください。

 また、26日の大阪は満席となりましたが、当日お越しくださって立ち見席の後方でトークを見ていただくことは可能です(サイン会への参加もOKです)。

 27日の京都は、半分ぐらいの時間はプロジェクターを使った解説(以前朝日カルチャーセンターや大塚国際美術館でおこなった講演「ダン・ブラウン翻訳秘話」に近い内容)なので、東京、大阪とはほぼ別内容です。
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 朝日カルチャーセンターの4月期翻訳講座は、すでに受付がはじまっています。

 東京・新宿教室では、今回から「英米小説の翻訳」クラスの時間帯が変わり、土曜午後と火曜午前の2クラスとなります。右側の「講座を探す」で調べてください。

 大阪・中之島教室は従来どおりで、4月期は久しぶりに「文芸翻訳のツボ」もあります。こちらも右側の「講座を探す」で調べてください。

 内容の詳細などについては、来週の中ごろにこのブログであらためてお知らせします。

2016年2月10日 (水)

『翻訳百景』刊行

【2月23日追記 25日の東京トークイベント、26日の大阪トークイベントは、ともに満席となりました。東京はキャンセル待ち、大阪は立見観覧が可能です】

【2月17日追記 25日の東京トークイベント、26日の大阪トークイベントは残席わずかです。参加を希望なさるかたは早めにお申しこみください。】

 角川新書『翻訳百景』が本日刊行されます。これまでこのブログに書いてきた記事やトークイベントで話した内容を土台にして、大幅に加筆したものです。英語表現への言及が少しだけありますが、英語が得意でない人でもじゅうぶんに楽しめる内容にしたつもりです。どうぞご一読くださるよう、よろしくお願いします。

 この本は「翻訳の現場」「『ダ・ヴィンチ・コード』『インフェルノ』翻訳秘話」「翻訳者への道」「翻訳書の愉しみ」の4章から成り立っています。

 第1章「翻訳の現場」では、文芸翻訳の仕事のアウトラインを示しながら、いっしょに仕事をした優秀な編集者たちのこと(手書きメモのはいったゲラの実物などを数ページ載せています)、翻訳書のタイトルのつけ方、日ごろの仕事で心がけていることなどを紹介しています。

 第2章「『ダ・ヴィンチ・コード』『インフェルノ』翻訳秘話」では、ダン・ブラウンの諸作にどのように取り組んできたかを中心として、訳語選びや調査にまつわるこぼれ話などをまとめて書きました。パロディ本 The Da Vinci Cod の話も最後に少し載せてあります。

 第3章「翻訳者への道」には、修業時代のことや、学ぶこと全般についていま考えていることをまとめました。

 第4章「翻訳書の愉しみ」では、翻訳書を少しでも多くの人たちに読んでもらうためにこの何年かかけて取り組んできた活動について、くわしく書きました。全国翻訳ミステリー読書会、読書探偵作文コンクール、さらには去年の「ことばの魔術師 翻訳家・東江一紀の世界」のことなどを紹介しています。また、『思い出のマーニー』のときにおこなった短期間での共同作業についても、具体的な分担の表やメモの実物を載せて説明しています。

 どんな思いでこの本を準備したかについては、まえがきとあとがきにくわしく書きました。ここでは、まえがきの一部をそのまま紹介します。

  本の魅力や読みどころを的確に伝えるのはむずかしいし、自分には書評家の人たちほどの周辺知識や紹介術があるわけでもない。ただ、翻訳者としてそれぞれの作品に全力でかかわり、一冊について何か月にもわたる地味な作業をつづけるなかで、日本じゅうのだれよりも(ひょっとしたら世界じゅうのだれよりも)その作品に精通した者として、独自の切り口で作品の魅力を紹介することは可能だと思う。さいわい、自分にはミステリーや児童書の訳書だけでなく、語学学習や翻訳技術を扱った著書もあるため、翻訳書の読者のほか、漠然と語学や翻訳に興味のある人などもずいぶん多くブログを見てくれているようだ。そんな人たちに、完成品としての翻訳書のおもしろさだけでなく、翻訳の仕事そのものや語学がらみの話題も同時に伝えていき、いろいろな角度から関心を持ってもらうのが自分にはいちばん向いていると考え、いまはそんな立場でときどき記事を書いている。
 カルチャーセンターや書店などでの講演も、みずから主催する形で数か月に一度ゲストを呼んで話を聞く翻訳百景ミニイベント(本書が刊行されるまでに十五回開催)も、すべて同じ考えでおこなっている。この本で紹介する全国翻訳ミステリー読書会や読書探偵作文コンクールも含めて、これらは自分にとって翻訳の仕事そのものと同じくらい愛着があり、すでに生活の一部になっていると言ってもよいほどだ。
 本書は、ブログ「翻訳百景」にこれまでに書いた記事や、各種のイベントで話したことなどを土台とし、それに大幅に加筆して再構成したものである。ところどころで英文の実例や、それに対応する訳文が生まれる過程なども紹介するので、それらを通して、翻訳の仕事の現場を具体的に知ってもらいたい。
 これを読んだ人が多少とも翻訳の仕事に興味を持ち、わたしにかぎらず、翻訳者たちが丹精をこめて生み出した本を一冊でも多く手にとってくださることを祈っている。

 何度かお知らせしたとおり、この『翻訳百景』と『インフェルノ』文庫版(25日発売)の刊行を記念して、3日連続でトークイベント&サイン会(すべて参加費無料)をおこないます。両書をすでに読んでいても未読でもじゅうぶんに楽しめる内容のものなので、ぜひお誘い合わせのうえお越しください。

 2月25日(木)の第16回翻訳百景ミニイベント(表参道・東京ウィメンズプラザ)は、(株)KADOKAWA 文芸・ノンフィクション局局長の郡司聡さんをお招きしての対談形式でおこないます。郡司さんは長く翻訳書の編集者として活躍された人で、ダン・ブラウンの版権を角川書店が取得したときの総責任者でもあります。当日は、『翻訳百景』の話、ダン・ブラウンの話だけでなく、翻訳出版の現在や未来についてもいっしょにお話しできたらと考えています。現在、約80名のかたがお申しこみになっていますが、まだお席を用意できます。参加をご希望のかたは、この記事をご確認のうえ、早めにお申しこみください。

 翌26日(金)には、紀伊國屋書店グランフロント大阪店でトークイベントを開催します。こちらはおそらく角川新書の編集者が聞き手になって進める形になりますが、トークの内容は前日の東京と似たものになります。詳細については、この告知記事をご覧のうえ、紀伊國屋書店グランフロント大阪店へ直接お申しこみください(無料ですが、整理券が必要になります)。

 さらに、その翌日の27日(土)には、京都のイベントスペース amu KYOTO でトークイベントをすることになりました。案内記事はこちらです。この日は翻訳ミステリー京都読書会の世話人のかたが聞き手となり、半分ぐらいの時間はプロジェクターを使った解説(以前朝日カルチャーセンターや大塚国際美術館でおこなった講演「ダン・ブラウン翻訳秘話」に近い内容)なので、25日の東京、26日の大阪とはほぼ別内容です。

2016年2月 5日 (金)

翻訳書の持ちこみ企画について(その2)

 少し前に翻訳学校フェロー・アカデミーのこのインタビュー記事で、先日の第15回ミニイベントでお招きした金原瑞人さんが翻訳企画の持ちこみについてかなりくわしく話していらっしゃいました。大変役立つ記事なので、ここでも紹介します。 

 特に、「持ち込みはなかなか成功しないという先入観があるのですが」という問いかけに対して、「そんなことはないですよ。それは持ち込み方が悪いからでしょう。もしくは持ち込む相手が悪いんだと思います」とお答えになっているところは、わたしにとっても衝撃的でした。わたし自身も、持ちこみに成功したことは、古典新訳も含めて数回しかないからです。 

 しかし、このインタビューを読み進めていくにつれ、うなずけることばかりだと感じました。ひとことで言えば、海外作品の紹介者として、編集者や出版社のアドバイザーになれるぐらいの知識や鑑識眼を持つべきだということでしょう。点や線で攻めるのではなく、面で攻めていくだけの気概が必要だと言ってもいいかもしれません。金原さんの域にまでいきなり達するのはむずかしいにせよ、翻訳学習者がこれからどんな勉強をしていけばよいかの指針は、このインタビューではっきり示されていると思います。 

 3年近く前になりますが、わたしもこの記事で企画持ちこみについて書きました(だから今回のタイトルに「その2」と入れています)。基本的な内容は金原さんのインタビューと同じ方向のもので、成功した例(わたし自身の話ではありませんが)をひとつ採りあげているので、合わせて参考にしてください。 

  「その1」にあたる記事の最後に「企画持ちこみというのは、仮に成功しなくても別の効用があって、そちらのほうがむしろ大きいと考えていますが、それについては後日また」と書いたままにしてあるので、少しだけですが、つづきを書いてみます。 

 もちろん、持ちこみ企画がそのまま採用されればそれに越したことはないのですが、わたしの場合は、持ちこみをつづけたりどんな作品が好きかを言いつづけたりすることによって、仮にその企画自体が成功しなかったにしても、自分の好みの作品を出版社からまかされる可能性が高まる、というつもりできょうまでやってきました。 

 たとえば、駆け出しの当時は多くの編集者を知っているわけではなかったので、金原さんのインタビューにある「この編集者なら出してくれるかな、という当たりをつける」ということはむずかしかったのですが、それでも何人かには企画を持ちこんだり何度も好みを伝えたりしています。そのころ推していた作品は結局刊行されませんでしたが、直後に類似の作品の仕事がまわってきたり、編集者が他社へ移籍したときに自分の好みの作品をまわしてくれたりという例はいくつもあり、そうやって何年かかけて仕事の幅をひろげてきました。 

 その後は時間に追われることが多く、特にエラリー・クイーンの新訳を担当していた時期は、新しい作家・作品を追いかける暇があまりなかったのですが、去年の夏に一段落して、少しずつ新企画を出版社に持ちこんだりしています。それらはまだ実を結んでいませんが、今回もやはり、その過程のなかで類書の翻訳を依頼されています。第8回ミニイベントの際の田内志文さんのメッセージにも通じるものがありますが、みずから動くことで、翻訳出版全体を盛りあげることができ、そのうえ、自分自身にも仕事がまわってきやすくなるというのはまちがいありません。 

 翻訳技術を磨くことはもちろん大事で、その土台をおろそかにはできないのですが(金原さんのインタビューも後半はそういう趣旨になっています)、受け身の勉強をするだけでただ待っているだけの人のところに仕事が来ることがきわめてむずかしい時代になっていることはたしかです。 

 ところで、その金原瑞人さんと三辺律子さんのトークイベントをもう一度開催することになりました。今回はさらにもうひとりゲストをお招きして、わたしは司会役にまわる予定です。テーマは海外のファンタジー作品について。詳細は来月にでもお知らせしますが、興味のある人は5月21日(土)の夜をあけておいてください。

2016年2月 1日 (月)

INFORMATION 2016-02-01

 【2月23日追記 25日の東京トークイベント、26日の大阪トークイベントは、ともに満席となりました。東京はキャンセル待ち、大阪は立見観覧が可能です】

【2月17日追記 25日の東京トークイベント、26日の大阪トークイベントは残席わずかです。参加を希望なさるかたは早めにお申しこみください。】

『翻訳百景』と文庫版『インフェルノ』の刊行記念トークイベントは、2月下旬に3日連続でおこなわれます。 

 2月25日(木)の第16回翻訳百景ミニイベント(表参道・東京ウィメンズプラザ)は、(株)KADOKAWA 文芸・ノンフィクション局局長の郡司聡さんをお招きしての対談形式でおこないます。参加費は今回のみ無料。現在、すでに約60名のかたがお申しこみになっていて、お席の半分以上が埋まりました。参加をご希望のかたは、この記事をご確認のうえ、早めにお申しこみください。 

 翌26日(金)には、紀伊國屋書店グランフロント大阪店でトークイベントを開催します。こちらはおそらく角川新書の編集者が聞き手になって進める形になりますが、トークの内容は前日の東京と似たものになります。詳細については、この告知記事をご覧のうえ、紀伊國屋書店グランフロント大阪店へ直接お申しこみください(トークイベントは無料ですが、整理券が必要になります)。 

 さらに、その翌日の27日(土)には、京都のイベントスペース amu KYOTO でトークイベントをすることになりました。案内記事はこちらです。この日は翻訳ミステリー京都読書会の世話人のかたが聞き手となり、半分ぐらいの時間はプロジェクターを使った解説(以前朝日カルチャーセンターや大塚国際美術館でおこなった講演「ダン・ブラウン翻訳秘話」に近い内容)なので、25日の東京、26日の大阪とはほぼ別内容です。こちらも参加費は無料です。 

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 アルクの『翻訳事典』2017年版が先週発売されました。今年は訳文吟味教室の出版翻訳編を担当し、3人の生徒の訳文を添削しました。

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 今年も翻訳ミステリー読者賞が催されます。これは全国翻訳ミステリー読書会の人たちが中心になって運営しているもので、プロ・アマを問わず、すべての読者による投票で決定します。今年から方式が簡単になり、1作だけに投票する形になりました。初心者も含めて、だれでも気軽に参加できる賞なので、ぜひ皆さんも投票してください。投票は3月1日スタートです。

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 これまで全国の読書会へ出向くたびにツイッターでつぶやいてきたことをまとめました。半分以上がラーメンなどの画像ですが、よかったら見てください。

 「全国翻訳ミステリー読書会&ラーメン店めぐりの記録

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