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  • 越前敏弥
    文芸翻訳者。 いまのところ、更新は週1、2回程度です。 ご感想・お問い合わせなどは office.hyakkei@gmail.com へお願いします。
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2015年10月

2015年10月28日 (水)

第15回ミニイベントのお知らせ

 お待たせしました。

 すでに簡単に予告していた第15回翻訳百景ミニイベントの申しこみ受付を、本日から正式に開始します。

日時:  2016年1月14日(木) 19時から20時30分

会場:  東京ウィメンズプラザ(表参道駅から徒歩7分、渋谷駅から徒歩12分)

参加費: 1,000円

ゲスト: 金原瑞人さん、三辺律子さん

【ゲスト紹介】(敬称略)

金原瑞人(かねはら みずひと)

1954年岡山市生まれ。法政大学教授・翻訳家。
訳書は児童書、ヤングアダルト小説、一般書、ノンフィクションなど、450点以上。訳書に『豚の死なない日』『青空のむこう』『国のない男』『不思議を売る男』『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』『月と六ペンス』『さよならを待つふたりのために』など。
エッセイに『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』『翻訳のさじかげん』『サリンジャーにマティーニを教わった』など。
日本の古典の翻案に『雨月物語』『仮名手本忠臣蔵』『怪談牡丹灯籠』。

三辺律子(さんべ りつこ)

英米文学翻訳家。白百合女子大学、フェリス女学院大学講師。
主な訳書に『龍のすむ家』シリーズ(クリス・ダレーシー)、『モンタギューおじさんの怖い話』(クリス・プリーストリー)、『ジャングル・ブック』『少年キム』(ラドヤード・キプリング)、『おいでフレック、ぼくのところに』(エヴァ・イボットソン)、『マザーランドの月』(サリー・ガードナー)、絵本に『まいごのペンギン』(オリヴァー・ジェファーズ)、『だれも知らないサンタの秘密』(アラン・スノウ)など。
共著に『12歳からの読書案内 海外作品』『子どもの本 ハンドブック』ほか。


 おふたりは最近、海外小説のおもしろさを伝える無料冊子《BOOKMARK》を創刊なさいました。現在、第2号の発行を準備中だそうです。

 当日は、《BOOKMARK》の創刊のいきさつや今後の展望、海外YA(ヤングアダルト)作品の魅力などについてうかがうほか、事前に参加者のみなさんから集めた質問に答えていただく時間をとる予定です。

 お申しこみのメールは office.hyakkei@gmail.com 宛にお願いします。その際、氏名(本名、または著訳書のペンネーム。ハンドルのみは不可)と、当日連絡のつきやすい電話番号または携帯メールアドレス(PCと同じアドレスの場合はその旨)をかならず書いてください。 

 また、金原さん・三辺さん(両方でもどちらか一方でも可)への質問も募集しています。お申しこみのメールに書き添えてもらえれば、当日の進行の参考にさせていただきます(すべての質問にはお答えできないかもしれないことをご承ください)。

 【11月1日追記】案内チラシを作成しました。どなたでもご自由にダウンロードしてください。

「15th_event.pdf」をダウンロード

15th_event_01_6
《BOOKMARK》についての詳細を知りたいかたは、金原さんの公式サイトのこの記事をご覧ください。また、第1号はすでに在庫がないそうですが、このページからデータをダウンロードできます。

 なお、第2号は「本に感動、映画に感激」というタイトルで、原作も面白いし、その映画も面白いという作品を特集なさるそうです。紹介する作品は以下のとおりです(変更の可能性あり)。(【 】で囲まれているのは映画のタイトル。記述がない場合は原作と同タイトル)

◎ぼくと1ルピーの神様(ヴィカース・スワループ著、子安亜弥訳、武田ランダムハウスジャパン) 【スラムドッグ・ミリオネア】
◎ブロークバック・マウンテン(E・アニー・プルー著、米塚真治訳、集英社)
◎ジョイラック・クラブ(エィミ・タン著、小沢瑞穂訳、角川書店)
◎悪童日記(アゴタ・クリストフ著、堀茂樹訳、早川書房)
◎トレイン・スポッティング(アーヴィン・ウェルシュ著、池田真紀子訳、早川書房)
◎ザ・ロード(コーマック・マッカーシー著、黒原敏行訳、早川書房)
◎ヘルプ 心がつなぐストーリー(キャスリン・ストケット著、栗原百代訳、集英社)
◎太陽がいっぱい(パトリシア・ハイスミス著、佐宗鈴夫訳、河出書房新社) 【太陽がいっぱい】&【リプリー】
◎ロスト・シング(ショーン・タン著、岸本佐知子訳、河出書房新社)
◎オン・ザ・ロード(ジャック・ケルアック著、青山南訳、河出書房新社)
◎ウォールフラワー(スティーブン・チョボスキー著、田内志文訳、集英社)
◎ミアの選択(ゲイル・フォアマン著、三辺律子訳、小学館) 【イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所】
◎さよならを待つふたりのために(ジョン・グリーン著、金原瑞人・竹内茜訳、岩波書店) 【きっと星のせいじゃない】
◎走れ、走って逃げろ(ウーリー・オルレブ著、 母袋夏生訳)
◎モーターサイクル・ダイアリーズ(エルネスト・チェ・ゲバラ著、棚橋加奈江訳、角川書店)
◎ハウルの動く城1 魔法使いハウルと火の悪魔(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著、西村醇子訳、徳間書店) 【ハウルの動く城】

 また、金原さんとひこ・田中さんの監修による『10代のためのブックガイド 150!』(ポプラ社)が11月に出る予定だそうです(三辺さんも執筆なさっています)。ミニイベントに参加なさるかたは、ぜひお読みになったうえでご参加ください。

2015年10月20日 (火)

伊藤和夫先生のこと(後編)

 先週の前編では、おもに英文の読み方や学習法のことを書きましたが、きょうはそれとはちょっとちがう話です。

 わたしが駿台にかよっていたのは1980年度と81年度で、そのときは伊藤先生の英文解釈の授業を受けていました。もう30年以上も前のことなので、記憶があいまいなことも多く、ここから先に書くことは数値などの細かい部分が正確ではないかもしれません。その点をご了承ください。 

 当時の駿台は1コマ50分授業で、1学期には各コマが11回ずつありました。最初に渡された英文解釈のテキストには、[1]から[11]までの大問として、長文とそれぞれ数題の設問が載っていました。たしか英文の短いほうから順に配列されていたと思います。生徒は1コマぶんを予習して授業に臨むのですが、わたしは(そして、おそらくほとんどの生徒は)第1回の授業の前に、最初だからそう進まないだろう、11コマで[11]までだからまさか[2]まではやるまいと思って、[1]だけを予習していきました。 

 授業がはじまり、最初の10分ほどは英文を読んで訳すうえの心構えなどの説明があり、そのあとで[1]の解説になりました。そして、終了の1、2分前、その解説が終わり、だれもがテキストとノートを閉じようとしたその瞬間、伊藤先生の声が響きました。 

「1番はこれで終わり。つぎ、2番!」 

 そしていきなり[2]の冒頭の一文の解説がはじまったのです。予習していなかったわたしは(そして、おそらく多くの生徒は)面食らい、次回は[2]だけではなく、念のため[3]の予習をしていきました。 

 2年目の最初の授業でも、伊藤先生はまったく同じように、最後の1分で唐突に[2]にはいりました。おそらく、すべて予定どおり、すべて計算ずくのことだったのでしょう。当時の自分は驚くばかりでしたが、しばらく経ってみると、そこからは、どんな状況でも1分でも無駄にするなという強いメッセージと、同じ英文を2週にわたってより深く予習させようというきびしくもあたたかい配慮を感じとることができました。 

 もうひとつ、もっと強烈に記憶に残っている出来事があります。 

 駿台は全クラスが座席指定制ですが、人気講師の授業になると「もぐり」の生徒が大挙して押しかけました。あいている席には早い者勝ちで別クラスの生徒がすわり、通路にもおおぜいが腰をおろしたものです。当然、席取りをめぐるトラブルもときどき起こりました。

 ある日、伊藤先生の授業がはじまった数分後、前のほうの空席にすわっていた「もぐり」の生徒を、休憩からもどったその席の正規の生徒がどかせようとしていました。眉をひそめてそれを見ていた伊藤先生は、もぐりではなく、正規のほうの生徒に向かって、「おい、きみが出ていけ!」と一喝したあと、こうおっしゃいました。

「予備校側は、たしかにきみたちの席を用意している。お金を払ったきみたちには、その席にすわる権利がある。でも、それは授業がはじまるまでだ。始業のベルが鳴った瞬間、その席に着いていない人間の権利は消滅するんだよ」

 伊藤先生から教わったのは、英語の読み方だけではありません。権利とは何か、ルールとは何か、時間厳守とは何かということも教わりました。 

 わたしはいま、たとえば朝日カルチャーのクラス生の自主提出課題は、締め切りを1秒でも過ぎたら受理しません。また、どんなに実力があっても、どんなにセンスがよくても、特に理由もなく授業に遅刻してくる人は締め切りも守れない可能性が高いので、翻訳の手伝いやリーディングなどは頼まないことにしています(正確に言うと、いつも締め切りぎりぎりに提出するのも好きではありません)。

 そんなふうにしているのは、もちろん自分が翻訳の仕事をはじめてからのあれこれの経験ゆえの判断ですが、原点にあるのは、10代の終わりに伊藤和夫先生に教わった経験だと思っています。

2015年10月16日 (金)

伊藤和夫先生のこと(前編)

日本人なら必ず誤訳する英文』のインタビューコーナー(p73、p74、p126)などで、駿台予備学校時代に2年間教わった伊藤和夫先生の話をしましたが、きょうから2回に分けてもう少しくわしく書きます。

日本人なら必ず誤訳する英文』では、「左から右へ読む」というごくあたりまえのことをしつこいくらい強調し、その当然のことをしないせいで誤読・誤訳する例をいくつも紹介しましたが、これは自分が駿台にかよっていたときに伊藤先生から何度も聞かされたことでもあります。無意識のうちの「予想→確認」や「予想→違和感→修正」のプロセスも、伊藤先生が口頭や板書で何度も説明なさったことでした。この本を読んでくださった同世代の人たちのブログなどでは、懐かしいとか聞き覚えがあるという書きこみが相次ぎ、こちらも少々恥ずかしかったものです。

 ところで、伊藤先生の授業を実際に聞いた人なら同意なさるでしょうが、けっして音読のうまい先生ではありませんでした。極端なほど平板な、抑揚も切れ目もない読み方をなさったのです。これは戦前世代だったということもあるかもしれませんが、わたしの印象では、構文を生徒に体得させるためには音によって先入観を与えてはいけないという強い意志と配慮があったと思います。

 もちろん、教師が流暢に英文を読みあげれば、聞いている生徒は心地よく、よい発音が身につきます。ただ、難解な英文の解読に関して言えば、教師が上手に読んでしまうと、それだけで大きなヒントを与えてしまうのです。

  In the examples I am thinking of the person continues to behave in what most people woud agree is a normal manner, but one so remote from his old self that he appears, to those who know him, to be someone else entirely.

 たとえば、『日本人なら必ず誤訳する英文・リベンジ編』(p123)で採りあげた上の英文のような場合、教師が「正しい」音読をした瞬間に構文がわかり、この英文のどこに引っかかりやすいのか、誤読の原因がなんなのかを究明できなくなるのです。

 わたし自身、予備校講師だった時代にはその点に特に気をつけ、ときには意図的に平板に読むように心がけていましたし、いまも翻訳の講座などで、たまにやるときがあります。そんなときは伊藤先生のことを思い出して懐かしくなります。

 そのほかでは、伊藤先生が最終回の授業で(わたしが聞いた2年とも)こんなことをおっしゃっていました。『日本人なら必ず誤訳する英文』からそのまま引用しますが――

「ほんとうの意味で大人の英語を読めるようになるには、積み重ねたときに君たちの身長と同じ高さになるぐらいの原書や英語雑誌を読まなければならない」

 このことばは、大学にはいってからも、自分が教える立場になってからも、翻訳の勉強をはじめてからもずっと自分のなかに残っていました。伊藤先生のこのことばは、その後の自分の目標となりましたが、完全に正しいわけではないかもしれません。自分がほんとうに読めているという手応えを感じるまでに、「身長程度」の英文を読む必要があったのは事実ですが、その何倍もの量を読みこなしたいまでも、まだまだわからないこと、調べなくてはいけないことはいくらでもあるのですから。

 ともあれ、自分の原点とも言うべきものを形作ってくれた伊藤先生のことばにはいまも感謝しています。しかし、伊藤先生から教わったのは英語の読み方や学習法だけではありません。実はもっと大きなこと、生き方そのものに関することを教わったのですが、それについては来週「後編」で書きます。

2015年10月 8日 (木)

一般講演「翻訳百景 英語と日本語のはざまで」について

 朝日カルチャーセンター(東京・大阪)では、本格的な翻訳講座のほかに、だれでも気軽に参加できる一般向け講演「翻訳百景 英語と日本語のはざまで」を半年に一度ぐらいのペースで開催しています。次回は大阪で10月24日、東京で11月7日におこないます。きょうはその内容について少しくわしく書きます。

 朝日カルチャーでの一般向け講演は、2010年ごろから不定期で開催し、誤訳防止に特化したものや、作品・作家を採りあげた翻訳秘話などをおこなうことが多かったのですが、少し前から上記のタイトルで東京・大阪ともそろえて開催しています。名称がややこしいのですが、オフィス百景で自主的におこなっている「翻訳百景ミニイベント」はおもにゲストを招いて作品・作家や業界事情などの話をすることが多いのに対し、朝日カルチャー主催の「翻訳百景 英語と日本語のはざまで」は越前単独で誤訳・悪訳や語学がらみの話をすることが多いです。

 朝日カルチャーの「翻訳百景 英語と日本語のはざまで」は、今回から以下のような構成でおこなう予定です。

1.きょうの誤訳

2.きょうの悪訳

3.きょうの特集

4.Q&A

 1と2では、最近の仕事や講座のなかで見つけたものを、思いつくままに紹介していきます。

 3の特集では、翻訳の仕事にまつわることを毎回ちがうテーマでお話しします。今回は「翻訳書のタイトルのつけ方」というテーマで、おもに自分の過去の訳書を採りあげて、どんな事情で決まっていったかなどをお話しします。

 たとえば、原題 Winter of the Wolf Moon は、なぜ訳題『ウルフ・ムーンの冬』ではなく『ウルフ・ムーンの夜』になったかとか、『飛蝗の農場』はなぜ原題 The Locust Farm どおりでなければいけなかったのかとか、The Da Vinci Code の訳題はどういういきさつで『ダ・ヴィンチの暗号』ではなく『ダ・ヴィンチ・コード』に決まったかとか。

 正確な語義やダブルミーニング、作者・訳者の意図、出版界の通例など、さまざまな問題にふれながらお話ししていくつもりです。

 ちょうどつい最近、東京創元社のサイトに編集者Sさんが「翻訳ミステリのタイトルはこうやって決めている!」というエッセイをお書きになっているので、予習として読んできてもらうと、より楽しめると思います。この連載のほかの回もぜひ読んでみてください。

「翻訳百景 英語と日本語のはざまで」は、以下の日程でおこないます(ほぼ同じ内容)。

 東京(新宿)教室   11月7日(土) 15:00 - 16:30(お申しこみはここ

 大阪(中之島)教室 10月24日(土) 12:30 - 14:00(お申しこみはここ

 朝日カルチャーのほかの講座については、この記事にまとまっています。東京の「英米小説の翻訳」は途中からの参加も可能なので、事務局にお問い合わせください。

2015年10月 2日 (金)

第14回ミニイベント報告

 9月29日(火)の夜に第14回翻訳百景ミニイベント(エラリー・クイーン翻訳秘話)をおこないました。参加者は48名で、おそらくいつもよりも一般読者のかたの比率が高く、半数近くがそうだったと思います。集まってくださったみなさん、ありがとうございました。 

 6年かけて取り組んできたエラリー・クイーン新訳の総まとめをしたかったこともあり、具体的な英文を検討しながらの話題をいくつも用意していたのですが、大阪で7月に開催したときの内容にいくつか加え、量が多すぎたこともあって、途中で一部を端折らざるをえなかったのが残念でした。それでも、クイーンにかぎらず、古典新訳をすることの意義はかなりお伝えすることができたと思っています。 

 当日集まったアンケートへのご回答をいくつか紹介します。 

・エラリー・クイーンが好きなので、旧訳の比較などのお話が聞けて楽しかったです。『災厄の町』をこのたび新訳で再読したら、高校生の時とは比較にならないくらい心に染みました(いま大学3年です)。『フォックス家の殺人』『十日間の不思議』もぜひ新訳をお願いします。 

・エラリイ・クイーン超初心者のわたしでも、とても楽しめました。各作品の解説も、タイトルづけの裏話も興味深かったです。英文・訳文の比較は勉強になりました(得した気分です!)。時間がなくなって省略することになったところが気になります。エラリイ・クイーンが後半で"大人になる"ときの口調の変化を読んでみたいです。ありがとうございました。 

 引きつづき、エラリー・クイーンの各作品をどうぞよろしくお願いします。 

 会場の東京ウィメンズプラザのすぐ下にある青山ブックセンター本店では、このトークイベントに合わせて、エラリー・クイーン作品と関連書のフェアを開催してくださいました。入口をはいってすぐ右のコーナーでいまも扱ってくれているので、お近くのかたはぜひお立ち寄りください。

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 次回の翻訳百景ミニイベント(第15回)は、来年の1月14日(木)の夜に、同じ表参道の東京ウィメンズプラザで開催します。ゲストとして、つい最近《BOOKMARK》という無料冊子を創刊なさったおふたり、金原瑞人さん三辺律子さんをお招きします。《BOOKMARK》の内容や創刊のいきさつについては、金原さんのホームページのこの記事をご覧ください。 

 トークイベントの内容も含めた正式な告知は、今月末か来月末にあらためておこないますが、参加を希望なさるかたはもう申しこんでくださってもかまいません。前回と同じ要領でお願いします。

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