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  • 越前敏弥
    文芸翻訳者。 いまのところ、更新は週1、2回程度です。 ご感想・お問い合わせなどは office.hyakkei@gmail.com へお願いします。
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2014年4月

2014年4月28日 (月)

朝日カルチャーセンター7月期の指定課題書

 ちょっと気が早いのですが、朝日カルチャーセンター7月期の指定課題書が決まったので、お知らせします。

『三秒間の死角』(アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム著、ヘレンハルメ美穂訳、角川文庫)

『日本語の作文技術』(本多勝一著、朝日文庫)

『秘密』(ケイト・モートン著、青木純子訳、東京創元社)

『三秒間の死角』は、今年の翻訳ミステリー読者賞受賞作です。この本が刊行されたいきさつについては、翻訳ミステリー大賞シンジケートのこの記事この記事を読んでください。

『日本語の作文技術』は、翻訳のみならず、文章を書く人間のバイブルと言ってもよい本で、以前から課題書にしたいと思っていました。何十年も前の本ですが、いま読んでも学ぶべきことが満載です。

『秘密』は、一昨年の翻訳ミステリー大賞受賞作『忘れられた花園』の著者による最新作です。

 朝日カルチャーのクラスで翻訳書や周辺書の感想を全員に言ってもらうのは、当然ながら、翻訳書について知らなければ文芸翻訳の勉強をする意味がないからです。本音を言えば、半分ぐらいの時間をそれにあててもよいくらいです。翻訳文化の担い手たらんとするのであれば、最低でもこの程度のものは当然のこととして読んできてください。

 7月期の日程はまだ正式に発表されていませんが、東京は7月・8月・9月の最初の土曜、大阪は7月26日(25日が一般向け講演)となる予定です。東京は上記の順に全部、大阪は上記のうち最低1作ですが、可能ならすべて読んできてください。

2014年4月21日 (月)

INFORMATION 2014-04-21

 4月19日に第5回翻訳ミステリー大賞授賞式&コンベンションがおこなわれ、『11/22/63』(スティーヴン・キング著、白石朗訳)が受賞しました。おめでとうございます。

 通常の上下巻の倍という破格の長さであるにもかかわらず、その長さをまったく感じさせないストーリーテリングのうまさが光る作品です。未読のかたはぜひ手にとって堪能してください。

 また、同時に第2回翻訳ミステリー読者賞も発表され、こちらは『三秒間の死角』(アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム著、ヘレンハルメ美穂訳)が受賞しました。

 この作品は、出版に至るまでさまざまな紆余曲折を経たり、刊行時期の関係で各種ランキングに選ばれなかったり、不運がつづいていたので、こういう形で脚光を浴びたことをうれしく思います。臨場感とプロットの独創性では並ぶもののない稀有な作品という印象を受けました。

 授賞式&コンベンションの前後の様子は、ここにまとまっています。じっくりご覧ください。参加してくださったみなさん、投票してくださったみなさん、ありがとうございました。

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 4月26日(土)午後6時からの紀伊國屋書店グランフロント大阪店でのイベントは2部構成になります。第2部では、上記の結果を受けて、翻訳ミステリー大賞・読者賞の受賞作・候補作のおもしろさと読みどころを、関西翻訳ミステリー読書会の有志メンバーたちといっしょに紹介していきます。

 後半は、ギリアン・フリン著『ゴーン・ガール』(大賞・読者賞でともに僅差の2位)の訳者・中谷有紀子さんをお招きし、この作品の魅力や出版に至るいきさつなどをくわしくうかがいます。

 お申しこみの詳細についてはここをご覧ください。

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 5月29日(木)に第9回翻訳百景ミニイベントでは、英仏両語の翻訳で大活躍なさっている河野万里子さんをお招きします。内容やお申しこみ方法についてはこちらを見てください。

2014年4月11日 (金)

訳文作りのメモ

 訳文を作る際に何を心がけるべきかについては、『日本人なら必ず悪訳する英文』や近日公開の〈文芸翻訳入門〉にこれまであれこれ書いてきましたが、かつて翻訳学校の上級クラスで教えていたころには、もう少しくわしいメモを配付していました。自分の好みにすぎないことや、あまりにも細かい具体例も多く書いてあるため、すべての内容を公開することはできませんが、いくつかの事項はあえて秘匿する必要もないので、きょうは7つだけ紹介します。

 ここに列記したことは、私見ではあるものの、小説の翻訳をするにあたっての重要なルールだと信じています。

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・「?」「!」は、どうしても必要なとき以外はつけない。

・「~くる」「~いく」「~もらう」「~くれる」「~あげる」「~しまう」「~こむ」などは、主語の省略、人物関係の明確化、事実の強調などのために有効だが、むやみに使うと文章が間延びして安っぽくなる。不要な場合はいっさい使わない、ぐらいの姿勢がちょうどいい。

・「彼」「彼女」などを使わないために人名に置き換えるのはひとつの手だが、そればかりやっていても、カタカナだらけでもっと読みづらくなるだけで、本質的な解決にならない。「彼」「彼女」の最大の問題は、主格や目的格を不可欠とする英語の文体をそのまま残した生硬さを感じさせてしまうことであり、日本語本来の文体を心がけて訳せば、わざわざ人名に置き換えなくても、ほとんどの「彼」「彼女」はほうっておいても自然に消えるはず。

・「~に行く」と「~へ行く」について、本来正しいのは「~へ行く」。もちろん現代語では「~に行く」を使う場面があってもいいが、「へ」は未来のこと、「に」は過去のことを語る場合になじみやすい。また、ただでさえ、「に」はいろいろな意味や用法で使われるので、連発にはつねに気づかうべき(「三時にいっしょにロンドンに行く」など)。「向かう」「渡る」「もどる」「帰る」などの動詞についても同様。

・擬声語、擬態語などは、原文が明らかにそういうニュアンスの場合やどうしても避けられない場合以外は使わないこと。使いすぎると安っぽく幼稚な文になる。

・原文が比喩ではないのに訳文が比喩というのは、原則として避けるべき(日本語の言いまわしが、ひとつの不可分な慣用句になっている場合を除く)。

・訳注は、もちろん、つけないのがベスト。ただし、訳文に説明を織りこむことで、かえって不自然になるとき(特に台詞のなかの場合)は、訳注を入れる以上に見苦しく読みづらく興醒め。それをよく考えること。

2014年4月 4日 (金)

2本立てイベントのお知らせ

 以前も少しお知らせしましたが、4月26日(土)の午後6時から紀伊國屋書店グランフロント大阪店で2本立てのイベントを開催します。

 内容とだいたいの時間割は以下のとおりです。

18:00~19:00

  第1部  『日本人なら必ず誤訳する英文 リベンジ編』刊行記念講演会

19:15~20:30
  第2部  翻訳ミステリー大賞・読者賞を徹底的に語る! 座談会
              ゲスト 中谷友紀子さん(翻訳ミステリー大賞候補作『ゴーン・ガール』訳者)
             関西翻訳ミステリー読書会有志

 第1部では、『日本人なら必ず誤訳する英文・リベンジ編』の「誤訳を防ぐための3か条」に沿って、いくつか英文の実例をあげながら話を進めていきます。あまり複雑な英文は選びませんし、英語以外の話をしている時間も長いので、気軽にご参加ください。

 しばらくの休憩のあと、第2部はがらりと変わって、今年の翻訳ミステリー大賞と読者賞の受賞作・候補作の魅力を語り合う座談会です。

 まず、翻訳ミステリー大賞と読者賞の設立趣旨や過去の受賞作、4月19日(土)の授賞式&コンベンションの様子などをわたしからお話ししたあと、今年の受賞作・候補作のそれぞれの読みどころを、関西翻訳ミステリー読書会のメンバーたちといっしょに紹介していきます。

 さらに、大賞候補作のひとつ『ゴーン・ガール』について、関西在住の訳者・中谷友紀子さんをお招きし、この作品のおもしろさや訳出にあたっての裏話などをたっぷり語っていただく予定です。

 当日は会場で書籍の販売もあり、終了後にはサイン会をおこないます。

 関西方面にお住まいで、翻訳や翻訳出版に興味のあるかたはぜひお越しください。19日のコンベンションに参加するかたも参加できないかたも、どちらも大歓迎です。

 お申しこみの詳細については、こちらをご覧ください。

 今回のイベントは、関西翻訳ミステリー読書会のみなさんが積極的に動いてくれたことで、実現の運びとなりました。ありがとうございます。また、このような変則的なイベントの開催を承諾してくださった紀伊國屋書店グラントフロント大阪店とディスカヴァーのかたがたにも大変感謝しています。

 今後も、特に第2部のような形のミニイベントを継続的に開催していきたいものです。

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