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  • 越前敏弥
    文芸翻訳者。 いまのところ、更新は週1、2回程度です。 ご感想・お問い合わせなどは office.hyakkei@gmail.com へお願いします。
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2012年12月14日 (金)

『シートン動物記』について

 角川つばさ文庫から『シートン動物記』が刊行されました。「ビンゴ わたしの愛犬」「オオカミ王ロボ カランポーの支配者」「ギザ耳 あるワタオウサギの物語」「灰色グマの一代記」の4編が収録されています。わたしの訳書としては、『ミケランジェロの封印をとけ!』以来4年ぶりの児童書です。

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 日本では《シートン動物記》として何種類もの訳書がシリーズとして出ていますが、そのようなシリーズがもともと存在していたわけではなく、シートンが遺した50余りの物語を日本で一括してそのように呼んできただけです。今回収録された4編のうち、「灰色グマの一代記」を除く3編は、シートンの第1作品集であるWild Animals I Have Known におさめられていたものです。

 シートンの原書は今回初めて読んだのですが、かなり難解な比喩があったり、ブラックユーモアに近いものがあったりで、子供向けに書かれているとはとうてい言えない文章でした。過去に何種類も訳書が出ていますが、翻訳ではみな苦労なさったはずです。

 今回のわたしも、ずいぶん噛み砕いたつもりでしたが、小学校中学年程度の子供たちに読んでもらいたいという版元の希望に応えることがなかなかできず、入稿後に全面的にリライトするという、翻訳者生活ではじめての体験をしました。そうやってリライトしたあとも、初校ゲラでは、編集者からの鉛筆書きと自分自身で納得がいかない個所を含めて、1ページにつき10か所程度を直さざるをえず、再校でもさらに100か所以上を修正するという、すさまじい改稿作業の連続でした。デビュー当時に東京創元社の編集者から「1万本ノック」で鍛えられたときのことを思い出しました。今回の担当編集者は、以前大人向けの翻訳書を何冊もいっしょに作ってきた人で、絶対の信頼関係がすでに築かれていたので、だからこそきびしい日程のなかでの作業を乗りきれたのだと思います。初心に返る、貴重な経験をさせてもらいました。

 そうやってできあがった今回の訳書では、超訳でも抄訳でもないぎりぎりのところで、動物の世界のきびしさをありのままに伝えるシートンの作品の魅力を小学生に伝える最大限のくふうをしたつもりです。10歳前後のお子さんへのクリスマスプレゼントなどにしていただけるとありがたいです。もちろん、大人にとってもじゅうぶんに読み応えのある作品ばかりなので、よかったら手にとってみてください。

 自分にとっても初心に返るよい機会であり、また、児童書との接点をこれからも持ちつづけたい気持ちも強いので、できるものなら今後もこのシリーズと付き合っていきたいものです。

 角川つばさ文庫の『シートン動物記』の紹介ページはこちらです。

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