プロフィール

  • 越前敏弥
    文芸翻訳者。 いまのところ、更新は週1、2回程度です。 ご感想・お問い合わせなどは office.hyakkei@gmail.com へお願いします。
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2012年12月

2012年12月28日 (金)

INFORMATION 2012-12-28

◎角川文庫から、エラリー・クイーンの国名シリーズ第2弾『フランス白粉の秘密』が刊行されました。今後も続々刊行していく予定です。

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◎第4回翻訳ミステリー大賞の最終候補作6作が決まりました。以下のとおりです。

『解錠師』スティーヴ・ハミルトン/越前敏弥訳(早川書房)

『罪悪』フェルディナント・フォン・シーラッハ/酒寄進一訳(東京創元社)

『湿地』アーナルデュル・インドリダソン/柳沢由実子訳(東京創元社)

『毒の目覚め』S・J・ボルトン/法村里絵訳(東京創元社)

『深い疵』ネレ・ノイハウス/酒寄進一訳(東京創元社)

『無罪 INNOCENT』スコット・トゥロー/二宮馨訳(文藝春秋)

 このあと、6作すべてを読んだ翻訳者による投票がおこなわれ、4月中旬に大賞が決定します。選考経過に関する記事はこちら

 これらは朝日カルチャー(東京・大阪)の講座の指定課題書としてあり、受講生全員がこのうち少なくとも1作(できればすべて)を読んで感想を言う時間を春までにとります。

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 第6回翻訳百景ミニイベントは、2013年2月28日(木)の夜に、井口耕二さんをゲストとしてお招きして開催します。詳細についてはこちらをご覧ください。

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 朝日カルチャーセンターの1月期の翻訳講座は、東京(新宿)が2月2日、3月2日、3月30日に、大阪(中之島)が1月26日におこなわれます。どちらも「文芸翻訳のツボ」「英米小説の翻訳」の2種類のクラスがあります。詳細についてはこちらをご覧ください。

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 今年の更新はこれが最後になります。みなさん、よいお年をお迎えください。来年もどうぞよろしくお願いします。

2012年12月25日 (火)

『英和翻訳基本辞典』について

 宮脇孝雄さんの『英和翻訳基本辞典』(研究社)が先日発売されました。これは翻訳者・学習者はもちろん、多少とも語学や海外文化に興味がある人にはぜひ読んでもらいたい本です。

 宮脇さんが《週刊ST》に約20年にわたって連載なさったコラムは、これまで、『翻訳家の書斎―「想像力」が働く仕事場』、『翻訳の基本―原文どおりに日本語に』、『続・翻訳の基本』の3冊に分けて出版されてきました。今回の『英和翻訳基本辞典』は、それらに収録されなかったものに新たな記事を加え、見出しをアルファベット順にして再構成したものです。500ページ近くあり、前の3冊をすべて合わせたぐらいの情報がぎっしり詰まっています。

 最初の『翻訳家の書斎』が出たころ、わたしはまだ新人で、そこに載っていた調べ物のコツや単語・熟語に関する背景知識などを大いに参考させてもらいました。残りの2冊が出たときも、誤訳や悪訳をできるかぎり減らすための強力な武器として、みずから何度も読み返すとともに、同業者や生徒たちにもずっと推薦しつづけてきました。

 今回出た『英和翻訳基本辞典』は、いちおう辞書の体裁にはなっていますが、これは隅から隅まで繰り返し熟読すべき本です。たとえば、academic という見出し語の下には「すぐ思いつく訳語」として、「アカデミックな、学術的な」とあり、その下に「もしかしたら……」として「空理空論」という訳語が紹介され、そのあと、この語に関する説明や具体的な誤訳例が並んでいるという具合。ほかの見出し語では、「辞書にある訳語」の下に「豆知識」があったり、「誤った訳」の下に「正しくは……」があったり、微妙に構成がちがう場合もありますが、いずれにせよ、英文を正しく読んでいくための情報が満載で、どの項目も読み飛ばせません。それでいて、もともとがよい息抜きになるようなコラムだったこともあり、読みつづけても疲れないくふうがされています。ごくふつうに読み物としても楽しめます。

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 翻訳者が仕事の質を高めていくためにも、語学学習者が正確な知識を身につけていくためにも、必携の1冊です。わたしもこれから繰り返し読みこんでいくつもりですが、すでに何十もの項目で冷や汗を流しました。残念ながら『翻訳家の書斎』はいまは入手がむずかしいのですが、『翻訳の基本』、『続・翻訳の基本』も合わせて、じっくりお読みになることをお薦めします。

2012年12月21日 (金)

第6回ミニイベントの概要

・第6回の翻訳百景ミニイベントの概要が決まりました。正式に受付を開始します。

  日時  2013年2月28日(木)午後7時から8時45分

  会場  表参道駅近くのセミナールーム(詳細は申込者に直接メールでお知らせします)

  参加費  1,500円

  ゲスト  井口耕二さん

 今回は、実務・出版の両分野の翻訳で大活躍なさっている井口耕二さんをゲストとしてお招きします。翻訳フォーラムのマネージャーを長年にわたってつとめていらっしゃることをご存じのかたも多いでしょう。井口さんご自身のサイトはこちらです。

 せっかく井口さんに来ていただくのですから、単なる対談ではもったいないと考えました。今回は井口さんとわたしが30分ずつの持ち時間でまずミニ講演をおこなったあと、後半はディスカッションやQ&Aの時間にするという流れにする予定です。

 講演内容は、現時点では漠然と「よい翻訳、悪い翻訳」というテーマで両者とも話す、ということしか決めていません。翻訳者や翻訳学習者だけでなく、翻訳や語学に少しでも興味のある人ならだれもが有意義と感じられるものにしていくつもりですので、どなたでも気軽にご参加ください。お申しこみの際に井口さんやわたしへの質問や要望などを書いていただければ、場合によっては当日の内容に反映させることができるかもしれません。

 お申しこみのメールは office.hyakkei@gmail.com 宛にお願いします。その際、本名または著訳書のペンネーム(ハンドルのみは不可)、当日連絡のつきやすい電話番号または携帯メールアドレスをかならず書いてください。

2012年12月14日 (金)

『シートン動物記』について

 角川つばさ文庫から『シートン動物記』が刊行されました。「ビンゴ わたしの愛犬」「オオカミ王ロボ カランポーの支配者」「ギザ耳 あるワタオウサギの物語」「灰色グマの一代記」の4編が収録されています。わたしの訳書としては、『ミケランジェロの封印をとけ!』以来4年ぶりの児童書です。

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 日本では《シートン動物記》として何種類もの訳書がシリーズとして出ていますが、そのようなシリーズがもともと存在していたわけではなく、シートンが遺した50余りの物語を日本で一括してそのように呼んできただけです。今回収録された4編のうち、「灰色グマの一代記」を除く3編は、シートンの第1作品集であるWild Animals I Have Known におさめられていたものです。

 シートンの原書は今回初めて読んだのですが、かなり難解な比喩があったり、ブラックユーモアに近いものがあったりで、子供向けに書かれているとはとうてい言えない文章でした。過去に何種類も訳書が出ていますが、翻訳ではみな苦労なさったはずです。

 今回のわたしも、ずいぶん噛み砕いたつもりでしたが、小学校中学年程度の子供たちに読んでもらいたいという版元の希望に応えることがなかなかできず、入稿後に全面的にリライトするという、翻訳者生活ではじめての体験をしました。そうやってリライトしたあとも、初校ゲラでは、編集者からの鉛筆書きと自分自身で納得がいかない個所を含めて、1ページにつき10か所程度を直さざるをえず、再校でもさらに100か所以上を修正するという、すさまじい改稿作業の連続でした。デビュー当時に東京創元社の編集者から「1万本ノック」で鍛えられたときのことを思い出しました。今回の担当編集者は、以前大人向けの翻訳書を何冊もいっしょに作ってきた人で、絶対の信頼関係がすでに築かれていたので、だからこそきびしい日程のなかでの作業を乗りきれたのだと思います。初心に返る、貴重な経験をさせてもらいました。

 そうやってできあがった今回の訳書では、超訳でも抄訳でもないぎりぎりのところで、動物の世界のきびしさをありのままに伝えるシートンの作品の魅力を小学生に伝える最大限のくふうをしたつもりです。10歳前後のお子さんへのクリスマスプレゼントなどにしていただけるとありがたいです。もちろん、大人にとってもじゅうぶんに読み応えのある作品ばかりなので、よかったら手にとってみてください。

 自分にとっても初心に返るよい機会であり、また、児童書との接点をこれからも持ちつづけたい気持ちも強いので、できるものなら今後もこのシリーズと付き合っていきたいものです。

 角川つばさ文庫の『シートン動物記』の紹介ページはこちらです。

2012年12月 8日 (土)

『解錠師』文庫化と各種ランキングでの順位

 スティーヴ・ハミルトン『解錠師』が、今年の年末の各種ランキングで以下の順位となりました。

 宝島社 このミステリーがすごい! 海外編  1位

 週刊文春 ミステリーベスト10   海外部門 1位 (詳細

 早川書房 ミステリが読みたい!   海外篇 2位 (詳細

 これにともない、急遽文庫化されて、きょうから書店に並んでいます。ポケミス版の訳者あとがきに少しだけ加筆しました。

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 この作品を読んで支持してくださったみなさん、ありがとうございます。

 ポケミス版の表紙から大きく変わったので、「これは……」と感じるかたもいらっしゃるかもしれませんが、翻訳ミステリーをふだん読まない人たちにも届かせたいという版元の願いがこめられていると思います。犯罪小説としてだけではなく、青春小説・成長小説としても強く心に残る作品なので、来月文庫化される去年の三冠作品『二流小説家』(デイヴィッド・ゴードン著、青木千鶴訳)ともども、日ごろ翻訳書を読まない人たちにぜひ薦めてください。

『解錠師』の翻訳者としてのコメントは《このミステリーがすごい!》に書いたので、よかったらそちらをご覧ください。このブログには、そこに載せられなかった、まったくの個人的余談を少しだけ書きます。

 スティーヴ・ハミルトンのデビュー作『氷の闇を越えて』が翻訳刊行されたのは、2000年4月。原書のリーディングをしたのは、わたしの初訳書が出て間もないころでした。主人公の探偵アレックス・マクナイトは元デトロイト市警の警官で、勤務中に銃弾を胸に受け、それを剔出できないまま退職を強いられます。その銃弾を心臓のすぐ横にとどめたまま、アレックスは「探偵になりたくない探偵」として、ためらいながらいくつかの事件を解決していくことになります。

『氷の闇を越えて』は「わたしの胸のなかには銃弾がある」という一文ではじまります。原書でこれを最初に読んだとき、なんだか他人事に思えず、もしこれがシリーズ化されるなら、ぜひ末永く付き合っていきたいと思いました。わたしの場合は、胸のなかに銃弾はありませんが、32歳のときにクモ膜下出血の手術を受けて以来、頭のなかにクリップがあるからです。この病気のあとで、あれこれ考えたすえ、翻訳学校にかよいはじめたわけですから、自分のとってこのクリップは、翻訳の仕事の原点のようなものです。すでに20年近くが経ち、いまではふだんはそんなものの存在すらほとんど忘れていますが、このシリーズのことを考えるたびに、動脈瘤が破裂した日のこと、入院中の日々のこと、そして、この世に何か残すために文芸翻訳の仕事をしようと考えはじめた日のことを思い出します。そんなこともあって、これは自分にとって大きな意味を持つシリーズであり、同い年のハミルトンは忘れがたい作家です。

 アレックス・マクナイト・シリーズは年に1作ぐらいのペースで書き継がれましたが、 『氷の闇を越えて』のあと、日本で翻訳刊行されたのは第2作『ウルフ・ムーンの夜』と第3作『狩りの風よ吹け』までです。その後、本国では第7作まで書かれ、ハミルトンはシリーズをいったん中断してスタンドアローンの作品を2作上梓しましたが(保護観察司を主人公とした "Night Work"と『解錠師』)、『解錠師』がMWAをはじめとする各賞をとったのをひと区切りと考えたのか、マクナイト・シリーズにもどって新作を連発し、来年には第10作が出る予定です。8作目以降はわたし自身もまだ読んでいないのですが、『解錠師』で"大化け"したと言われるハミルトンがどんなふうに変わっていくのか、今後が楽しみです。

 一度翻訳刊行が打ち切られたシリーズを復活させるのは至難の業ですが、自分にとって思い入れの深い作品でもあり、いつかまた日本で紹介できる日が来ることを祈っています。

 スティーヴ・ハミルトンのサイトはこちら。今回、週刊文春に寄せたコメントはこちらです(《このミス》へのコメントは掲載誌をご覧ください)。ベストセラー作家となったいまもなお、IBM社に在籍しています。トップページにある"Die a Stranger"はシリーズ第9作です。

 

2012年12月 3日 (月)

朝日カルチャーセンター(東京・大阪)1月期の日程

 朝日カルチャーセンターの1月期の翻訳講座の日程が決まりました。東京・新宿教室も大阪・中之島教室も、「文芸翻訳のツボ」と「英米小説の翻訳」の2種類のクラスがあります。

 東京・新宿教室の1月期は、2月2日、3月2日、3月30日の3回です。「文芸翻訳のツボ」は10時から11時半まで(ここ)、「英米小説の翻訳」は12時45分から2時15分まで(ここ)です。どちらも1時間半×3回です。

 大阪・中之島教室の1月期は、1月26日の1回だけです。「文芸翻訳のツボ」は10時から13時まで(ここ)、「英米小説の翻訳」(ここ)は14時から17時までです。両クラスとも3時間×1回です。

「文芸翻訳のツボ」は、小説を中心として、説明的文章や短詩なども扱いながら、文芸翻訳を手がけるにあたって留意すべきことをさまざまな角度から学びます。半年(2期)で完結する予定で、どの期からでも受講できます。

「英米小説の翻訳」は、長編小説の一部をていねいに訳していきます。10月期から半年間は新教材(『ダ・ヴィンチ・コード』のパロディ本である"The Da Vinci Cod")を扱っています。

 どちらの講座でも、英文の訳読のほかに、毎回指定した翻訳書を読んできて簡単に感想を言う時間を少しとります。課題書はこのブログの右側に並んでいます。1月期は、東京が《東西ミステリー ベスト100》と『傍迷惑な人々』、さらに翻訳ミステリー大賞候補作5作(12月末に発表予定)のうち1作以上。大阪は『冬の灯台が語るとき』『「象は鼻が長い」入門』『天使のゲーム』の3作のうち1作以上です。

 越前の講座をはじめて受ける人は、なるべく「文芸翻訳のツボ」から受講してください。ただし、回数が少ないので、可能なら最初から両方を受講することをお勧めします。

 大阪・中之島教室は、1月期から、新しくできたフェスティバルタワーの18階に移転になります。

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