プロフィール

  • 越前敏弥
    文芸翻訳者。 いまのところ、更新は週1、2回程度です。 ご感想・お問い合わせなどは office.hyakkei@gmail.com へお願いします。
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2012年11月

2012年11月23日 (金)

第5回ミニイベント報告

 きのう、第5回翻訳百景ミニイベントが表参道で開催されました。ゲストは『なんでもわかるキリスト教大事典』の著者・八木谷涼子さんと、この本の前身となった『知って役立つキリスト教大研究』の編集を担当した坂本久恵さん。ふだん使っている会議室の2倍の広さの部屋に、翻訳者や学習者だけではなく、作家や編集者や校閲者、教会関係者やキリスト教に興味のある一般のかたなど、おおぜいが集まってのにぎやかな講演会となりました。《週刊ST》の Bulletin Board を見て申しこんでくださったかたも何人かいらっしゃったようです。みなさん、ありがとうございました。

 前半は上記の2冊の成立事情や、キリスト教関係の調べ物で特に何に気をつけるべきかという話。後半は英文の具体例をあげて、訳語の選び方の話。とりわけ、ルビつきの資料や英米人が子供のころから暗記している文言をしっかり確認すべきという話は大変貴重で、あらためて、中途半端な調べ物はできないなと自戒したものです。

 残念ながら時間切れとなり、用意してくださった課題の一部しかお話をうかがえなかったのですが、残りのものについては、後日なんらかの形で八木谷さんのサイトやほかの媒体などで紹介してくださるそうです。八木谷さんならではの詳細な解説を楽しみにしています。

 もうひとつ、きのう感じたのは、よい著書はすぐれた著者だけでなく、すぐれた編集者とのコンビで生まれるものだということ。わたし自身も、初訳書の担当者をはじめとして、何人もの編集者のおかげで今日があるわけですが、電子出版になってもこういうのはそう簡単には変わらないだろうな、と思ったしだいです。

 次回(第6回)の翻訳百景ミニイベントは、2013年2月28日(木)に開催します。ゲストとして、井口耕二さんをお呼びする予定です。詳細は年が明けてからあらためてお知らせしますが、それ以前にお申しこみのメールを office.hyakkei@gmail.com 宛にくださってもかまいません。その際、本名または著訳書のペンネーム(ハンドルのみは不可)、当日連絡のつきやすい電話番号または携帯メールアドレスをかならず書いてください。

2012年11月15日 (木)

INFORMATION 2012-11-15

 ゲラ読みの作業などがつづいていて、なかなか更新できません。新刊・近刊の案内を簡単に書きます。

 先週、武田ランダムハウスから『逆転立証』(上下、ゴードン・キャンベル著)が出ました。本格的なリーガル・サスペンスを訳したのは今回がはじめてです。新米弁護士ダグラスの成長物語なのですが、主人公の指導役にあたるインテリやくざもどきのベテラン弁護士モーガンの人物造形がみごとです。強さと弱さを併せ持つモーガンのあまりに強烈な存在感は、この本の最大の魅力だと言えるでしょう。

 また、二転三転するプロットの独創性もなかなかのもので、自分自身、よもや後半にこんな展開になるとは予想もつかず、決着のしかたにも驚きました。

 作者は現役のベテラン弁護士で、本作はMWA(アメリカ探偵作家クラブ)の新人賞候補となりました。

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 12月には、角川文庫から、エラリー・クイーンの国名シリーズ第2弾『フランス白粉の秘密』が下村純子さんとの共訳で刊行されます。また、角川つばさ文庫から、『シートン動物記』(オオカミ王ロボなど4篇所収、小学校中学年向き)が出ます。

 実はもう1冊、文庫化される作品があるのですが、これについては後日書きます。

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‎ 11月22日の第5回翻訳百景ミニイベント(八木谷涼子さん講演会)で使われる資料の一部を見せてもらいましたが、期待した以上に濃密な内容です。キリスト教関係の調べ物に興味のあるかた、お時間があればぜひお越しください。講演内容の詳細はこちらです。現在、8割程度のお席が埋まっています。

 

2012年11月 5日 (月)

「『日本人なら必ず誤訳する英文』実践講座」終了

 ディスカヴァーのセミナーホールで9月から5回にわたっておこなわれていた「『日本人なら必ず誤訳する英文』実践講座」が、先日終了しました。参加者は17名。翻訳を勉強中の人が半分ぐらいで、残り半分は語学力に磨きをかけたいさまざまなバックグラウンドの人たちでした。ふつう、このような連続講座は、最終回には第1回の出席者の3分の2ぐらいに減るものですが、今回はうれしいことにひとりの脱落者もありませんでした。

『日本人なら必ず誤訳する英文』の第1部をアレンジした出題が多かったため、ちょっとやさしすぎるのではないかと心配していたのですが、ある程度予習ができるのでちょうどよいレベルと感じたかたが多かったようです。

 近いうちにまた、ほぼ同一内容の講座を準備したいと考えています。どんな内容だったかを知っていただくために、3問だけここで紹介します。もう一度開講する可能性もあるので答は書きませんが、ヒントは示します。

【1】

Buffalo buffalo Buffalo buffalo buffalo buffalo Buffalo buffalo.

 buffalo を8つ並べただけですが、実はこれは文法的に完全に正しい英文です。 『日本人なら必ず誤訳する英文』のA-63で紹介したthat が5つ並ぶ文以上の難問ですね。これは英文法の専門家のあいだでは有名な文で、バッファロー大学の先生が創作したものだそうです。

 ヒントは、8つのbuffaloを3種類に分類できるということ。固有名詞、集合名詞、動詞の3つです。あとは辞書で調べて考えてください。日本版Wikipediaの解説はこちらです。

【2】

You can't be too pessimistic about the future. Not about mine, anyway.

『日本人なら必ず誤訳する英文』で繰り返し説明した否定省略文です。A-24やA-85などを参考にしてください。ものすごく明るい人なのか、暗い人なのか、どちらでしょうか。

【3】

There was a smoking gun in the smoking compartment.

『日本人なら必ず誤訳する英文』のA-46に似た文で、分詞と動名詞のちがいを説明するためのものです。もちろん、左の smoking が分詞(つまり形容詞)で、右の smoking が動名詞(つまり名詞)。ところで、smoking gun には2通りの意味が考えられますが、お気づきでしょうか。ひとつしか思いつかない人は、辞書で smoking gun を調べてみてください。

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