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  • 越前敏弥
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2012年10月30日 (火)

Sauna-Lurker をどう訳すか

 発売中の《週刊ST》11月2日号に、連載「『ダ・ヴィンチ・コッド』に挑戦!」の第3回が掲載されています。

『ダ・ヴィンチ・コッド』のプロローグの冒頭は、"Jacques Sauna-Lurker lay dead in the main hallway of the National Art Gallery ..." という文ではじまります。これはもちろん、原典である『ダ・ヴィンチ・コード』の冒頭部分で、Jacques Saunière(ジャック・ソニエール)という人物の全裸死体がルーブル美術館の通路で見つかったことを下敷きとしたパロディです。それを踏まえたうえで、Jacques Sauna-Lurker という名前をどう訳すかというのが、連載第2回のテーマでした。

 ふつうに読めば、「ジャック・ソーナ-ラーカー」あたりでしょうが、それでは原典のパロディであることがまったく伝わりません。この作品は文学性を論じるようなものではなく、全編を通してばかばかしいことば遊びや親父ギャグが満載の作品ですから、そのことを最初に宣言する意味でも、かなりの冒険をしてよいところでしょう。

 sauna は「サウナ」で、lurker は「隠れる人」。なぜこんな名前にしたのか、正確なところは定かではありませんが、「ソニエール」にやや音韻が近いことと、なんとなくいかがわしい、なんとなく裸を連想させる名前であることの2つは見落とせないところです。この作品は東京・大阪の朝日カルチャーセンターのクラスなどでも同時に扱っているので、みんなに訳してきたもらったところ、おもしろい処理として「ジャック・サウナニイール」と「ジャック・スッポンポン‐ダンマリエール」というものがありました。前者は「サウナにいる」という意味を表しつつ、音の響きが「ソニエール」に似ているという、なかなかうまい処理です。後者は少々悪乗りがすぎる気がしますし、ダンマリエールの意味がよくわからないのですが(本人の説明によると、物言わぬ死体だから、ということでしたが、少々苦しいか)、このぐらいのインパクトがあってもいいかもしれません。

 わたし自身は、まず「サウナデカクレール」というのを考えつきましたが、ちょっと長すぎて読みにくいこともあり、最終的には「サウナデネール」(サウナで寝る)を採用しています。

 以上が《週刊ST》連載の第2回に書いた話の要約であり、先日の大阪講演でも同じ話をしました。大阪講演には、翌日の翻訳講座の生徒もたくさん参加していたので、上記の名前よりもいいものをあすまでに考えてきてください、と言って講演を終わりにしました。

 翌日のクラスで集まった名前の例は以下のとおりです。どれが正解とか、どれがいちばんよいとかいうのはありませんが、関西人のパワーが炸裂して、なかなか壮観です。ご参考まで。

・ジャック・サウナニッヒ・ソンデール

・ジャック・サウナデヌーグ

・ジャック・サウナ・ニ・コモール

・ジャック・サイ‐ナエール

・ジャック・ノゾキミール

・ジャック・サウナデノボセール

・ジャック・エセ・ソニエール

・ジャック・サウナ=ヒソーム

・ジャック・サウナデビール

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