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  • 越前敏弥
    文芸翻訳者。 いまのところ、更新は週1、2回程度です。 ご感想・お問い合わせなどは office.hyakkei@gmail.com へお願いします。
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2012年8月10日 (金)

枢機卿、法王、教皇

〈ローマ法王の休日〉という映画が公開されたのを機に、ちょっと思いついたことを書きます。

『天使と悪魔』や『ダ・ヴィンチ・コード』が刊行されたころ、何度かこういう質問を受けました。

「"枢機卿" に "すうききょう" とルビがふってあるけれど、正しくは "すうきけい"じゃないんですか?」

 実を言うと、わたし自身も、翻訳の仕事をする前は「すうきけい」だと思っていました。わたしが高校のころ(1970年代後半)の世界史の教科書では、まちがいなく「すうきけい」とルビがふられていましたから、同世代以上の人にとっては「すうきけい」のほうがなじみ深いかもしれません。

 しかし、ダン・ブラウンのシリーズを翻訳したときには、「枢機卿」にはかならず「すうききょう」とルビをふるようにわたし自身が指示しました。これには理由があります。

 もともと、この語は「すうきけい」と「すうききょう」の両方に読まれることがあったのですが、1981年2月に、当時のローマ教皇ヨハネ・パウロ2世が来日したとき、日本におけるローマ・カトリックの公的組織であるカトリック中央協議会が、マスコミなどに対して、混乱を避けるために報道においては「すうききょう」で統一するように要請しました。それ以後、正式には「すうききょう」が使われるようになり、NHKの『ことばのハンドブック』などにも「すうききょう」と掲載されています。

「ローマ法王」と「ローマ教皇」についても、同じときに「教皇」が正式である旨が確認されたのですが、こちらのほうはまだまだ「法王」と呼ばれることが多いようです。そのあたりについては、カトリック中央協議会のサイトにこんな記述がありますので、参考になさってください。

 以上の理由から、ダン・ブラウンのシリーズでは「すうききょう」の読みと「教皇」の訳語を採用しています。この問題については、当サイトの推薦書である『なんでもわかるキリスト教大事典 (朝日文庫)』にもほとんど言及がないので、ここで簡単に説明したしだいです。

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