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  • 越前敏弥
    文芸翻訳者。 いまのところ、更新は週1、2回程度です。 ご感想・お問い合わせなどは office.hyakkei@gmail.com へお願いします。
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2012年8月

2012年8月31日 (金)

ロスト・シンボルへの道

 先週末にダン・ブラウンの『ロスト・シンボル』が文庫化されました。公式サイトはこちらです。

 文庫化なので特に新しい情報はありませんが、以前ハードカバーが出たとき、刊行直前から直後にかけて、翻訳ミステリー大賞シンジケートのサイトに「ロスト・シンボルへの道」という連載記事を書きました。まだお読みになっていないかたはぜひご覧ください。特に、第3回の「その2」では、わたしがフリーメイソン東京ロッジへ出向いてインタビューをした折の模様を載せています。

 ほかに、『天使と悪魔』や『ダ・ヴィンチ・コード』も含めたトリヴィアクイズや裏話などもあります。

ロスト・シンボルへの道 第1回

ロスト・シンボルへの道 第2回

ロスト・シンボルへの道 第3回(その1)

ロスト・シンボルへの道 第3回(その2) (フリーメイソン探訪記)

ロスト・シンボルへの道 第4回

 また、関連書として、賛否両論を含めたさまざまな意見を集めた『「ロスト・シンボル」の真実』をこの機会にお勧めします。これは青木創さんが翻訳し、わたしが解説を書きました。

2012年8月28日 (火)

チューダー王朝弁護士シャードレイク

 先週刊行された『チューダー王朝弁護士シャードレイク』について、ひとこと。

 これはイギリスでベストセラーとなっている歴史ミステリー、マシュー・シャードレイク・シリーズの第1弾です。主人公のシャードレイクは、16世紀前半、ヘンリー8世治下のチューダー朝で権力者トマス・クロムウェル卿に仕える弁護士で、本作では腐敗が進む修道院で起こった監督官の殺人事件を解決します。

 ミステリーとしてのプロットのおもしろさももちろんじゅうぶんに楽しめますが、この作品、そしてこのシリーズの最大の魅力は、社会的強者の立場にある一方で背中に障碍をかかえているシャードレイクが、絶対の上司であるべきクロムウェルの恐怖政治に内心で疑問を感じたり、若い女性にかなわぬ恋情をいだいたりするというような、あまりにも人間くさい描写がぎっしり詰まっていることだと思います。

 修道院が舞台のミステリーということでは、『薔薇の名前』や修道士カドフェルのシリーズを思い浮かべる人が多いでしょうが、本作は『薔薇の名前』ほどのペダンティズムはなく、一方、カドフェルシリーズよりはかなり重厚な作りになっています。宗教改革の荒波のなかで苦悩する修道士たちや役人たちの心の動きがあまりにも生々しく描かれた作品です。

 時代背景が日本人にはややわかりにくいかもしれませんが、『ブーリン家の姉妹』や『ウルフ・ホール』をお読みになったかたにとっては説明不要でしょう。また、少し前にAXNミステリーで放映されていた〈チューダーズ・背徳の王冠〉のシリーズがすでにDVD化されているので、この機会にご覧になることをお勧めします。訳者あとがきには、時代背景についての説明を3ページほど入れたので、この時代にあまりなじみがないかたは、まずそちらをお読みください。

 シャードレイクのシリーズが出るという話を仲間内でしたところ、3人か4人の同業者が、実はいま、これに近い時代を舞台とする作品を訳しているという話をしてくれました。ちょっとしたブームになるかもしれません。

 マシュー・シャードレイク・シリーズは、この『チューダー朝弁護士シャードレイク』をはじめとして、イギリス本国ではすでに5作が出版されています。第1作の本作は、CWA(英国推理作家協会)のジョン・クリーシー・ダガー(最優秀新人賞)とエリス・ピーターズ・ヒストリカル・ダガー(最もすぐれた歴史ミステリーに贈られる賞)の両賞の候補作となりました。第2作 Dark Fire は、第1作から3年後の1540年のロンドンを舞台とした作品で、こちらは上記のヒストリカル・ダガーをみごと受賞しました。さらに、2007年には、このシリーズ全体が評価されて、CWAの図書館賞を受賞しています。

 日本では、いまのところ第2作 Dark Fire までの刊行が決定しています。どうぞよろしく。 
 

2012年8月24日 (金)

第4回ミニイベントの報告

 昨日、第4回ミニイベントが無事終了しました。

 いつものように前半はわたしが簡単に翻訳の話をしましたが、きのうは誤訳・悪訳の話はせず、親父ギャグと翻訳のトレーニングは紙一重であることなどを手がかりにして、わが師・田村義進による過去の名訳のいくつかを紹介しました。エルロイをはじめとする頭韻の数々には驚いたかたが多かったようですが、一方、ゲストの人たちは、ちょうどオズの国のシリーズのこの後の巻が頭韻オンパレードになっているらしく、参考になったとおっしゃっていました。

 後半はオズの国シリーズの訳者・コーディネーターのみなさんをお迎えし、オズ・シリーズ全14巻+番外編1巻を新訳することになったいきさつや、実際の分業のプロセスなどを具体的にうかがいました。

 全員がやまねこ翻訳クラブの創立当時からのメンバーで、説明するにあたってのチームワークなども抜群で、参加者のアンケートではそのことに感心したという意見が最も多く見られました。ひとつのシリーズを複数の人で訳し進めるにあたっての日程表や、閉じ開きをはじめとする膨大な注意書きは、自分自身も今後チームで訳出作業をしていく場合などの参考になり、大変有意義でした。

 何より、全員がこのシリーズのみならず、児童書やYAの翻訳の仕事を楽しんでいるのが感じられ、楽しいイベントとなりました。 

 参加者のかたのなかで、こんな感想ツイートを書いてくれた人がいらっしゃいました。同様に感じた人は多かったはずです。

 オズの国シリーズについてかつて書いた記事はこれです。よかったらこれを機にお読みになってください。とりわけ、第2巻の『オズのふしぎな国』の結末で受けた衝撃はいまも忘れられません。

 今回のイベントの後半部分は、やまねこ翻訳クラブのメールマガジンに収録されます。一般公開されるようであれば、後日このブログでもお知らせします。

 第5回の翻訳百景イベントは11月22日(木)を予定しています。会場はいつもの表参道の会議室に決まっていますが、ゲストは未定です。決まりしだいお知らせします。

 次回まで3か月あくのは、そのあいだの期間に『日本人なら必ず誤訳する英文』実践講座があるためです。こちらは楽しいイベントというより、本気で実力をつけたい人のための真剣勝負の講座です。中級以上の語学学習者や初中級の翻訳学習者のかたが対象です。

2012年8月21日 (火)

『日本人なら必ず誤訳する英文』実践講座の内容

 9月上旬からはじまる『日本人なら必ず誤訳する英文』実践講座の準備がだいたい整ったので、きょうは教材として使う英文の一部を紹介しながら内容を説明します。

 この講座は、3年前に出た『越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文 (ディスカヴァー携書)』を予習教材とし、5回にわたる演習を通して、知識を確実に定着させていくことを目的としています。『日本人なら必ず誤訳する英文』の第1部は文法項目ごとに10章に分かれていますが、毎回2章ずつを事前に熟読してきたうえで、講座の2時間のなかで類題や発展問題に取り組んでもらいます。

 教材は3種類に分かれています。

 第1に、三者択一式の文法問題を1回につき20問。これを10分間でその場で解いてもらい、時間内にこちらで採点して、正解率の低い問題を中心にざっと解説します。これによって、予習してきた文法項目に関する弱点をまず見つけます。

 扱うのは、たとえばこんな問題です。

・Tim must be looking forward as much to Lucy's return as she is herself to (     ) him.
   (A) see                (B) look                (C) seeing

・ (     ) is the writer of this novel?
   (A) Whom do you think     (B) Do you think who     (C) Who do you think

 第2に、『~誤訳する英文』の事前に読んできてもらった範囲の例文と誤読のポイントが似た英文20問をその場で渡し、その場で意味を言ってもらいます(辞書を見るのは自由です)。中にはかなり誤読率の高いものもありますが、『~誤訳する英文』をしっかり予習してあれば、さほど手強くはないはずです。たとえば、こんな英文です。『~誤訳する英文』を読んだかたなら、ああ、あれか、とお気づきになるはずです。

・I had been deeply depressed for many months when I heard the death of my father.

・Do you think she was the secret if indirect cause for his death?

 第3に、事前に取り組む課題として、毎回A4用紙1枚程度の英文に対して訳文を作ってきてもらい、わたしが簡単に添削したものをその場でお返しして、みなさんの出来に応じて説明します。英文は1行だけのものから10行程度のものまで、いろいろな組み合わせになっていて、内容は小説・ノンフィクション・ビジネス文書・図鑑などさまざまです。

 訳文を提出してもらうのは、あくまで正しく読めているかどうかを確認するためなので、ことさらにうまい訳ではなくてもかまいません(ただし、翻訳学習者のかたはある程度はくふうしてきてください)。

 これについても、ひとつだけ例文を紹介します。

 My skin crawled at the thought of Mark's eyes on it, his pity and perhaps disgust, for why should someone formed as he was not feel disgust?

 事前課題を毎回提出したうえで受講するのはけっして楽ではないと思いますが、本気で取り組んだ人にとっては、『~誤訳する英文』をただ読むだけの何倍もの効果が期待できる、とお約束します。

 開講は9月6日で、以後は隔週木曜日、全5回です。お申しこみはこちら

 ところで、最後の英文はきょう発売の『チューダー王朝弁護士シャードレイク (集英社文庫 サ 6-1)』の一節です。この作品については、日を改めてまた紹介します。

2012年8月14日 (火)

INFORMATION 2012-08-14

・第4回の翻訳百景ミニイベントの概要は以下のとおりです。残席10名ぶん程度になりました。参加を希望なさるかたは、早めにお申しこみください。

  日時  8月23日(木)午後7時から8時45分

  会場  表参道駅近くのセミナールーム(詳細はメールでお知らせします)

  参加費  1,500円

  ゲスト  林あゆ美さん、内藤文子さん、宮坂宏美さん、田中亜希子さん

 後ろの3人は、以前この記事で紹介した「オズの魔法使いシリーズ」の新訳チームのみなさんで、林さんは版元の復刊ドットコムとのあいだでコーディネーターをつとめていらっしゃいます。今回、このイベントのために遠方からおこしくださることになりました。また、全員がやまねこ翻訳クラブの創立当時からのメンバーでもあり、児童書やYAの翻訳全般についてお話をうかがう予定です。

 名作を復活させるプロセスは非常に興味深く、児童書にあまり関心のない人でも楽しめる内容になると思います。

 参加を希望されるかたは、office.hyakkei@gmail.com 宛にメールでお申しこみください。その際、本名または著訳書のペンネーム(ハンドルのみは不可)、当日連絡のつきやすい電話番号または携帯メールアドレスをかならず書いてください。すでにお申しこみくださったかたには、会場などについての返信メールをお送りしました。万が一まだ届いていない場合はご一報ください。

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 9月6日から隔週木曜日に、5回連続の講座「『日本人なら必ず誤訳する英文』実践講座」をディスカヴァーのセミナーホールで開催します。

 この講座では『越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文 (ディスカヴァー携書)』を予習テキストとして、類題や新作問題の演習、文法知識のチェックなどをおこなっていきます。正確な読解ができているかを確認するための英文和訳問題も毎回数問出題し、これについての添削指導もします。扱う英文はフィクション・ノンフィクション・図鑑・実務系など、さまざまなジャンルにわたっています。

 対象となるのは、誤訳・誤読に悩まされている翻訳学習者・語学学習者全般です。1回の講座で『日本人なら必ず誤訳する英文』の〈PART A〉の2章ぶんずつ進み、文法項目ごとに弱点を洗い出していきます。

 このような形で文法的なことを詳細まで解説する機会は今後はほとんどないと思われるので、少しでも興味のあるかたはぜひ参加してください。 

 これはディスカヴァー主催の講座なので、当ブログでは申しこみを受けつけていません。参加を希望なさるかたはこのページからお申しこみください。

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・小学生から高校生までを対象にした「真夏の読書探偵」作文コンクールが開催されています。要項や各出版社からのメッセージ・推薦書リストは、ここにまとめてあります。PDF版の推薦書リストはここにありますので、どなたでもダウンロードしてお使いください。フライヤーやリストを設置してもらった場所についての情報がありましたら、この記事にある地図に書きこんでいただけるとありがたいです。

 未来の翻訳書読者を増やしていくことを目的にはじめたこのコンクールの趣旨に賛同してくださるかたはぜひご協力ください。広く告知できそうな方法をご存じのかたは、ご一報くだされば、できるかぎり対応します。

2012年8月10日 (金)

枢機卿、法王、教皇

〈ローマ法王の休日〉という映画が公開されたのを機に、ちょっと思いついたことを書きます。

『天使と悪魔』や『ダ・ヴィンチ・コード』が刊行されたころ、何度かこういう質問を受けました。

「"枢機卿" に "すうききょう" とルビがふってあるけれど、正しくは "すうきけい"じゃないんですか?」

 実を言うと、わたし自身も、翻訳の仕事をする前は「すうきけい」だと思っていました。わたしが高校のころ(1970年代後半)の世界史の教科書では、まちがいなく「すうきけい」とルビがふられていましたから、同世代以上の人にとっては「すうきけい」のほうがなじみ深いかもしれません。

 しかし、ダン・ブラウンのシリーズを翻訳したときには、「枢機卿」にはかならず「すうききょう」とルビをふるようにわたし自身が指示しました。これには理由があります。

 もともと、この語は「すうきけい」と「すうききょう」の両方に読まれることがあったのですが、1981年2月に、当時のローマ教皇ヨハネ・パウロ2世が来日したとき、日本におけるローマ・カトリックの公的組織であるカトリック中央協議会が、マスコミなどに対して、混乱を避けるために報道においては「すうききょう」で統一するように要請しました。それ以後、正式には「すうききょう」が使われるようになり、NHKの『ことばのハンドブック』などにも「すうききょう」と掲載されています。

「ローマ法王」と「ローマ教皇」についても、同じときに「教皇」が正式である旨が確認されたのですが、こちらのほうはまだまだ「法王」と呼ばれることが多いようです。そのあたりについては、カトリック中央協議会のサイトにこんな記述がありますので、参考になさってください。

 以上の理由から、ダン・ブラウンのシリーズでは「すうききょう」の読みと「教皇」の訳語を採用しています。この問題については、当サイトの推薦書である『なんでもわかるキリスト教大事典 (朝日文庫)』にもほとんど言及がないので、ここで簡単に説明したしだいです。

2012年8月 7日 (火)

INFORMATION 2012-08-07

 9月6日から隔週木曜日に、5回連続の講座「『日本人なら必ず誤訳する英文』実践講座」をディスカヴァーのセミナーホールで開催します。

 この講座では『越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文 (ディスカヴァー携書)』を予習テキストとして、類題や新作問題の演習、文法知識のチェックなどをおこなっていきます。正確な読解ができているかを確認するための英文和訳問題も毎回数問出題し、これについての添削指導もします。扱う英文はフィクション・ノンフィクション・図鑑・実務系など、さまざまなジャンルにわたっています。

 対象となるのは、誤訳・誤読に悩まされている翻訳学習者・語学学習者全般です。1回の講座で『日本人なら必ず誤訳する英文』の〈PART A〉の2章ぶんずつ進み、文法項目ごとに弱点を洗い出していきます。

 これはディスカヴァー主催の講座なので、当ブログでは申し込みを受けつけていません。参加を希望なさるかたはこのページからお申しこみください。

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・「真夏の読書探偵」作文コンクールの募集がはじまりました。要項や各出版社からのメッセージ・推薦書リストは、ここにまとめてあります。PDF版の推薦書リストはここにありますので、どなたでもダウンロードしてお使いください。

 未来の翻訳書読者を増やしていくことを目的にはじめたこのコンクールの趣旨に賛同してくださるかたはぜひご協力ください。広く告知できそうな方法をご存じのかたは、ご一報くだされば、できるかぎり対応します。

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・朝日カルチャーセンター大阪・中之島教室の10月期は、まだ正式な案内は出ていませんが、10月27日(金)に開講する予定です。いつもと同じく、「文芸翻訳のツボ」は10時から13時まで、「英米小説の翻訳」は14時から17時までです。

・東京・新宿教室の7月期は、すでに1回終了し、9月1日、9月22日の2回ですが、途中からの参加も受け付けています。「文芸翻訳のツボ」は10時からの回(ここ )と15時15分からの回(ここ)のどちらか一方を受講してください。「英米小説の翻訳」は12時半からの回(ここ)のみです。はじめて参加するかたは、なるべく「文芸翻訳のツボ」(半年で完結)から受講してください。

2012年8月 3日 (金)

読書探偵をよろしく

 多忙のため、イベント関係の告知以外のことをほとんど書けない状態に長らく陥っていますが、読書探偵作文コンクールをどうぞよろしくお願いします。未来の翻訳書読者を育てていくことを目標にはじめて、今年で3回目になります。ひとりでも多くの子供たちに参加してもらいたいと事務局一同、強く願っています。応募用紙や各出版社からの推薦書とメッセージはここからダウンロードできます。

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