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  • 越前敏弥
    文芸翻訳者。 いまのところ、更新は週1、2回程度です。 ご感想・お問い合わせなどは office.hyakkei@gmail.com へお願いします。
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2012年7月

2012年7月31日 (火)

INFORMATION 2012-07-31

 先週発売となった《ミステリマガジン》2012年9月号に、今年のMWA最優秀短篇賞受賞作、ピーター・ターンブルの「鉄道運転士に向って帽子を掲げた男」が訳載されています。読了後しばらくたってからじわじわ身にしみてくる、ふしぎな短篇です。

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 きょうの翻訳ミステリー大賞シンジケートの掲載記事は、少し前にはじまった連載〈矢口誠の敵情偵察隊〉の第3回「偵察任務#03:スティーヴ・ハミルトン『解錠師』」です。物騒なタイトルで度肝を抜かれましたが、読んでいくと、矢口さんの翻訳ミステリーへの愛が強烈に伝わってくる文章です。ご一読ください。「×××」の作品はいったいなんでしょうね。

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・「真夏の読書探偵」作文コンクールの募集がはじまりました。要項や各出版社からのメッセージ・推薦書リストは、ここにまとめてあります。PDF版の推薦書リストはここにありますので、どなたでもダウンロードしてお使いください。

 未来の翻訳書読者を増やしていくことを目的にはじめたこのコンクールの趣旨に賛同してくださるかたはぜひご協力ください。広く告知できそうな方法をご存じのかたは、ご一報くだされば、できるかぎり対応します。

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・第4回の翻訳百景ミニイベントの概要は以下のとおりです。

  日時  8月23日(木)午後7時から8時45分

  会場  表参道駅近くのセミナールーム

  参加費  1,500円

  ゲスト  林あゆ美さん、内藤文子さん、宮坂宏美さん、田中亜希子さん

 これまで、ゲストは3人と告知していましたが、林あゆ美さんが遠方からお越しくださることになりました。後ろの3人は、以前この記事で紹介した「オズの魔法使いシリーズ」の新訳チームのみなさんで、林さんは版元の復刊ドットコムとのあいだでコーディネーターをつとめていらっしゃいます。また、全員がやまねこ翻訳クラブの創立当時からのメンバーでもあり、児童書やYAの翻訳全般についてお話をうかがう予定です。

 名作を復活させるプロセスは非常に興味深く、児童書にあまり関心のない人でも楽しめる内容になると思います。

 参加を希望されるかたは、office.hyakkei@gmail.com 宛にメールでお申しこみください。その際、本名または著訳書のペンネーム(ハンドルのみは不可)、当日連絡のつきやすい電話番号または携帯メールアドレスをかならず書いてください。すでにお申しこみくださったかたには、会場などについての返信メールをお送りしました。万が一まだ届いていない場合はご一報ください。

2012年7月27日 (金)

第3回イベント終了&今後のイベント案内

・第3回翻訳百景ミニイベントがきのうディスカヴァー社のセミナーホールで開催されました。いつもより30分長いバージョンで、後半はディスカヴァー出版部長の藤田浩芳さんに話をしていただきました。

 前半は時間が多くあったこともあり、第1回と第2回では駆け足にならざるをえなかったsix words と訳書紹介のセッションでゆっくり話すことができました。

 後半は藤田さんからディスカヴァー社がどうやって翻訳書のベストセラーを多く生み出してきたかなど、興味深いお話をいくつか聞くことができました。 

 ふだんとはタイプのちがう参加者のかたもかなりいらっしゃっていて、こちらとしてもよい刺激になったと思います。今後もときどきディスカヴァーへ出張してこのような形で開催したいと考えています。

 この第3回ミニイベントの模様はここで録画を見ることができます。第1回ミニイベント(ゲストは夏目大さん)の録画はこちら

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・第4回の翻訳百景ミニイベントの概要は以下のとおりです。

  日時  8月23日(木)午後7時から8時45分

  会場  表参道駅近くのセミナールーム

  参加費  1,500円

  ゲスト  林あゆ美さん、内藤文子さん、宮坂宏美さん、田中亜希子さん

 これまで、ゲストは3人と告知していましたが、林あゆ美さんが遠方からお越しくださることになりました。後ろの3人は、以前この記事で紹介した「オズの魔法使いシリーズ」の新訳チームのみなさんで、林さんは版元の復刊ドットコムとのあいだでコーディネーターをつとめていらっしゃいます。また、全員がやまねこ翻訳クラブの創立当時からのメンバーでもあり、児童書やYAの翻訳全般についてお話をうかがう予定です。

 名作を復活させるプロセスは非常に興味深く、児童書にあまり関心のない人でも楽しめる内容になると思います。

 参加を希望されるかたは、office.hyakkei@gmail.com 宛にメールでお申しこみください。その際、本名または著訳書のペンネーム(ハンドルのみは不可)、当日連絡のつきやすい電話番号または携帯メールアドレスをかならず書いてください。すでにお申しこみくださったかたには、会場などについての返信メールをお送りしました。万が一まだ届いていない場合はご一報ください。

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 第5回翻訳百景イベントは11月22日(木)の開催を予定しています。 

 9月と10月には、ディスカヴァー主催で「日本人なら必ず誤訳する英文・実践講座」(仮称)という5回連続のセミナーを開催する予定です。

 そのほか、10月7日(日)に金沢、10月26日(金)に大阪で、それぞれ一般向けの講演会を予定しています。

 いずれも、時期が近くなったらもう少しくわしく紹介します。

 

2012年7月24日 (火)

INFORMATION 2012-07-24

・第3回翻訳百景ミニイベント(7月26日)では、 Q&Aの前までの時間にUstream中継をすることになりました。中継はここでおこなわれます。

 残席はわずかですが、受付はここでおこなっています。この回は主催がディスカヴァー・トゥエンティワンになるので、リンク先のサイトに記載されている要領でお申しこみください。当サイトでは受けつけていません。ディスカヴァーのサイトではわたしがゲストとして紹介されていますが、内容は第1回・第2回とほぼ同じ形式のロングバージョンで、後半はディスカヴァー出版部長の藤田浩芳さんとの対談とQ&Aになります。

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・8月21日刊行予定の『チューダー王朝弁護士シャードレイク (集英社文庫) 』のパイロット版ができました。書影はこんな感じになる予定です。16世紀イングランドの修道院を舞台としたシリーズの第1弾です。

Photo

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・「真夏の読書探偵」作文コンクールの募集がはじまりました。要項や各出版社からのメッセージ・推薦書リストは、ここにまとめてあります。PDF版の推薦書リストは今週末に翻訳ミステリー大賞シンジケートのサイトにアップされる予定です。

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・7月21日の第1回札幌読書会は、盛況のうちに開催されました。後日レポートが掲載される予定です。

・7月27日(金)の第7回大阪読書会7月28日(土)の第4回名古屋読書会8月3日(金)の第6回福岡読書会は、おかげさまですべて満席となりました。

・8月18日(土)には、番外編・福島「金田一耕助ウォーキング」 さらに9月には第3回横浜読書会や第1回埼玉読書会の開催もほぼ内定しています。

 

2012年7月20日 (金)

読書探偵作文コンクール開催

 本日、第3回読書探偵作文コンクールがスタートしました。今年は夏休みを利用して、「真夏の読書探偵」となります。どうぞよろしくお願いします。去年の審査結果はここにあります。

 このコンクールについては、書きたいことが山ほどあるのですが、今年は初の試みとして、各出版社の翻訳書担当者からの推薦書とメッセージを募ったところ、予想をはるかに上まわる数が寄せられたため、いまはリスト作成などの作業に忙殺されています。まさに、うれしい悲鳴です。

 今夜から週末にかけて(全部で5回に分かれる予定)、リストとメッセージを翻訳ミステリー大賞シンジケートのサイトに連続掲載していくので、どうぞご覧ください。各社の熱い思いが伝わってきます。

 読書探偵作文コンクールについては、今後もこのブログで何度か紹介していきます。

2012年7月17日 (火)

INFORMATION 2012-07-17

・第3回翻訳百景ミニイベント(7月26日)は、現時点で8割程度のお席が埋まっています。受付はここでおこなっています。この回は主催がディスカヴァー・トゥエンティワンになるので、リンク先のサイトに記載されている要領でお申しこみください。当サイトでは受けつけていません。ディスカヴァーのサイトではわたしがゲストとして紹介されていますが、内容は第1回・第2回とほぼ同じ形式のロングバージョンで、後半はディスカヴァー出版部長の藤田浩芳さんに話をしていただきます。

 藤田さんは先日ディスカヴァーの社長室ブログに、これまでのディスカヴァーの翻訳出版へのかかわり方についてお書きになっていました。当日はさらにくわしい話をうかがう予定です。このブログをご覧の多くのかたにとって、ディスカヴァーの独特のアプローチのしかた(翻訳出版にかぎらず)は大変参考になると思うので、よかったらお越しください。

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・今後開催予定の各地方の翻訳ミステリー読書会の日程をここにまとめます。

 7月21日(土) 第1回札幌読書会 (残席わずか)

 7月27日(金) 第7回大阪読書会 (残席わずか)

 7月28日(土) 第4回名古屋読書会 (満席)

 8月3日(金) 第6回福岡読書会(満席)

 8月18日(土) 番外編・福島「金田一耕助ウォーキング」

 さらに、9月には第3回横浜読書会や第1回埼玉読書会の開催もほぼ内定しています。

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・朝日カルチャーセンター東京・新宿教室の7月期は、8月4日、9月1日、9月22日の3回です。「文芸翻訳のツボ」は10時からの回(ここ )と15時15分からの回(ここ)のどちらか一方を受講してください。「英米小説の翻訳」は12時半からの回(ここ)のみです。どれも1時間半×3回です。

・大阪・中之島教室の10月期は、まだ正式な案内は出ていませんが、10月27日(金)に開講する予定です。いつもと同じく、「文芸翻訳のツボ」は10時から13時まで、「英米小説の翻訳」は14時から17時までです。

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・第1回の翻訳百景ミニイベント(5月24日、ゲストは夏目大さん)の録画は、こちらで観ることができます。時間は1時間余りです。

・第4回の翻訳百景ミニイベントの概要は以下のとおりです。

  日時  8月23日(木)午後7時から8時45分

  会場  表参道駅近くのセミナールーム

  参加費  1,500円

  ゲスト  内藤文子さん、宮坂宏美さん、田中亜希子さん

 ゲストの3人は、以前この記事で紹介した「オズの魔法使いシリーズ」の新訳チームのみなさんです。また、やまねこ翻訳クラブの創立当時からのメンバーでもあり、児童書やYAの翻訳全般についてお話をうかがう予定です。

 第1回イベントでアンケートをとったところ、児童書やYAの翻訳関係者を呼んでもらいたいという声が最も多かったので、それを受けて依頼したしだいです

 参加を希望されるかたは、office.hyakkei@gmail.com 宛にメールでお申しこみください。

2012年7月13日 (金)

胡蝶の夢

 先日、ソクーロフ監督の〈ファウスト〉を観たとき、若返った者ゆえの懊悩と煩悶を描いたということで〈コッポラの胡蝶の夢〉を思い出しました。

 以下は、2008年に〈コッポラの胡蝶の夢〉が公開されたとき、記念刊行されたムック『フランシス・F・コッポラ ~Francis Ford Coppola & His World 』に書いた文章です。残念ながら、版元のエスクァイア・ジャパンが休刊して、いまは読めなくなっているので、ここに転載します。

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起動装置となる鏡が導く自らの人生への旅

 フランシス・フォード・コッポラが妙ちきりんな新作を撮ったという噂は、以前から聞いていた。なんでも、〈ジョニーは戦場へ行った〉と〈アルジャーノンに花束を〉を合わせたような設定で、主人公が時空を自在に超越していく話なのだとか。荒唐無稽なスペクタクルのたぐいを予想したものだが、実際に観たところ、きわめて地味で内向的な、古めかしいとさえ評すべき小品だったのでいささか驚いた。

 もっとも、深い内省を静かに描き出す傾向はコッポラの作品の大半に見られるものだから、その点はなんら意外でもない。初期の作品にはおおむねその味わいがあるし、一見それとはまったく対極に位置するかのような〈ゴッドファーザー〉や〈地獄の黙示録〉でも、物語の中心にあるのは、どちらも孤高の巨人の虚無と、それにどうにか近づこう、理解しようと実りなき苦闘を重ねる若者の絶望であり、〈ゴッドファーザー〉シリーズに至っては、PARTⅡ、PARTⅢと進むにつれ、主人公の孤独感はいや増すばかりである。だから、あれだけの大作にもかかわらず、印象に残るのは対話や群衆よりも、引き気味のカメラでうつむき加減の主人公ひとりだけを長々ととらえたシーンが多い。そう言えばコッポラ本人にしても、見かけこそ堂々たる風格を備えた巨漢だが、口を開けばどちらかと言うと小声で淡々と語り、自信なげな印象すら周囲に与えるというのは、一脈通じるものがある気がする。 

 いつごろのなんのインタビューだったかは忘れたが、コッポラがこれまでの諸作を振り返って、〈レインメーカー〉の現場がいちばん楽しかった、作家の書いたことをそのまま忠実に映画化するだけでいいんだから、まったくストレスがたまらないし消耗も少ない、という旨の発言をしたことがある。主人公におのれの願望や鬱屈を投影させて身も心も削っていく作業とは無縁ということだろう。それはそれでかまわないが(そして、もちろんワインビジネスはこの上なく楽しいのだろうが)、魂の原点へ回帰する機会は当然狙いつづけていたはずであり、その意味で今回の〈胡蝶の夢〉を作れたことでさぞ溜飲がさがったにちがいない。そして実際、映画人生の集大成と呼ぶにふさわしい映画として仕上がっていると思う。


〈胡蝶の夢〉では、自省の最たる象徴とも呼ぶべき小道具――鏡――が、さまざまな寓意を秘めたものとして、繰り返し効果的に用いられている。
 

 最初は主人公である言語学者ドミニク(ティム・ロス)の回想シーンの冒頭付近で、若きドミニクが恋人ラウラ(アレクサンドラ・マリア・ララ)に室内で打ち明け話をする個所。ここでは二十代のドミニクの顔をカメラが直接とらえることはなく、画面の左隅に配された小さな鏡に映った顔だけが明らかになる。若さが本来二度と還らないものであることを暗示するかのような、奇妙な画面作りである。 

 つぎは、落雷で全身に火傷を負って包帯だらけになったドミニクが、なぜか異常なまでの回復力を示して四十歳前後にまで若返り、はじめて自分の顔を鏡で確認するシーン。ここではドミニクの動きと鏡像のそれとが微妙にずれ、主人公に示唆を与える分身がこの世に存在することがほのめかされるのだが、一瞬の出来事にすぎないため、観客もドミニク本人もまだそれがどういう性質のものであるかを感知できず、得体の知れない不安が掻き立てられる。 

 三番目は、転院後、すでに自分が肉体の若さばかりか驚異的な記憶力をも身につけたことを知るドミニクが、すっかり我が物顔で「参謀」として自己主張するようになったおのれの分身としばし対話するシーン。ドミニクは全裸でベッドに横たわり、かたわらに置かれた長い鏡に分身の姿が映し出されるが、本人と分身の動きはわずかに異なり、やがて議論に疲れた本人だけが立ちあがる。交わされる会話は分身の存在理由についてのものであり、天使と堕天使、光と闇、存在と物質といった二項対立の一種であると結論づけられる。ここでの鏡は、会話内容の図式性を鮮やかに際立たせる装置として機能していると言えるだろう。 

 その後、分身はなんのはばかりもなく自在に顔を出すようになり、起動装置としての鏡はしばらく影をひそめるが、終盤近くにまったく別の役割を帯びて、最も印象的な形で再登場する。後半のヒロインである、ラウラの生き写しの女性ヴェロニカ(アレクサンドラ・マリア・ララの一人二役)が、歴史をさかのぼる霊媒まがいの体験をドミニクの研究のために夜ごと強いられたすえ、衰弱のあまり、二十代半ばであるにもかかわらず四十代後半の風貌に変わり果ててしまったことを悟る場面だ。ヴェロニカは部屋に鏡がないことに気づき、見せてくれとドミニクに要求する。ドミニクは躊躇するが、棚の上にぼやけた円光が見えたせいでヴェロニカに手鏡のありかを感づかれ、しぶしぶそれを持ってきて差し出す。おそるおそる手鏡をのぞきこむヴェロニカ。ゆっくりと、それでいて厳然と本人に事実を知らせる鏡の動きは、若松孝二監督の〈実録連合赤軍・あさま山荘への道程〉で坂井真紀演ずる遠山美枝子が自分の顔の惨状を知る瞬間ほどの衝撃はないとはいえ、やはり冷酷きわまりない。これは原始言語の研究のため、最愛のヴェロニカを結局のところ実験台として利用してきたドミニクのまさに自業自得であり、分身との狡猾な交流手段であった鏡が悲劇をもたらすきっかけとなってしまったのがいかにも皮肉である。 

 そして、病から救い出すべくヴェロニカとやむなく別れ、放浪のすえに故郷ピアトラネアムツに帰り着いたドミニクは、ホテルの一室で分身と口論をはじめ、激昂のあまり鏡を叩き割ってしまう。鏡は分身の住みかであり、割られた分身は行きどころを失って滅びていく。ドミニクにとって鏡との決別は分身との決別であり、それは「若さなき若さ」と付き合いつつ漂泊してきた人生(実年齢ではこの時点で百歳を超えている)の終焉をも意味している。 

〈カンバセーション……盗聴……〉には、盗聴器の見本市でジーン・ハックマンが招かれざる客のハリソン・フォードと巨大な鏡の前で出くわす場面があり、主人公の不安と驚愕がみごとに増幅されていたものだが、〈胡蝶の夢〉のコッポラは、考えうるかぎりのあの手この手を使って鏡という装置の魅力を存分に引き出している。また、鏡ばかりでなく、回想シーンでは上下逆さの画像や光の斑が多用されているが、これらはいずれも、おそらく技術的にはさほどむずかしいことではないと思われ、デジタル全盛のこのご時世にアナログにこだわった造りで勝負しているのが興味深い(少々粗っぽいと感じた個所もあるにはあるが)。 

 作劇そのものへ目を移すと、プロットは原作であるエリアーデの中編の流れをほぼ忠実に受け継いでいるものの、一文のなかでさえ頻繁に時空がねじれる原作の暴れっぷりをむしろ抑制し、たとえばラウラとヴェロニカを瓜ふたつの美女として造形したり、ナチへの批判色を強めるエピソードを差しはさんだりして、映画的な厚みを加えている。これはエンタテインメントとしての戦略というより、テーマを純粋かつ明確に打ち出すための判断だろう。 

 ところで、この作品、寓話っぽい構造が何かに似ている気がしてならず、あれこれ記憶をたどってみたところ、これはディケンズの『クリスマス・キャロル』の変奏曲ではないかと思いついた。ストーリーラインはかならずしも酷似しているとは言えないが、狷介な老人が人生の終局を迎える直前に超自然的ないきさつで時空を超えた旅に出かけ、先々で出会う人間や出来事に触発されて、生きることの意味を再発見するという全体の流れは〈胡蝶の夢〉にも通底するのではないだろうか。ライフワークである言語研究と愛する女性への献身とのあいだの痛切な葛藤を乗り越えて、本来の人生に従容として立ち帰るドミニクの姿は、強欲を捨て去ったスクルージのいわば進化形である。だとしたら、ハッピーエンドかどうかは本質的な問題ではない。タイトルにもあるとおり、人生が見果てぬ夢であることを悟得したわけだから、手に三本目の薔薇を握った最後の姿はすがすがしくさえ感じられた。 

 本国では観念的で難解と評されることが多かったようだが、〈胡蝶の夢〉は彩り豊かな寓意に満ちたファンタジーである。ルーマニアの若手ミハイ・マライメアJrのカメラワークは、ときにあのゴードン・ウィリスを髣髴させるほど巧みに色濃く陰影を描き出し、落ち着きと清新さの双方をこの作品に与えている
 

2012年7月10日 (火)

INFORMATION 2012-07-10

・ダン・ブラウンの『ロスト・シンボル』が文庫化され、8月25日に刊行される予定です。また、同じ8月に集英社文庫から、16世紀イギリスを舞台とした歴史ミステリー『チューダー王朝弁護士シャードレイク』が刊行されます。詳細は後日また書きます。

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 今年の読書探偵作文コンクールですが、第3回となる今年は「真夏の読書探偵」として開催します。概要をここで発表しました。今月20日ごろから募集を開始します。小学生から高校生までが対象となりますので、お知り合いなどに教えてあげてください。これも詳細は後日また。

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・第3回翻訳百景ミニイベント(7月26日)は、すでにここで受けつけを開始しています。この回は主催がディスカヴァー・トゥエンティワンになるので、リンク先のサイトに記載されている要領でお申しこみください。当サイトでは受けつけていません。ディスカヴァーのサイトではわたしがゲストとして紹介されていますが、内容は第1回・第2回とほぼ同じ形式のロングバージョンで、後半はディスカヴァー出版部長の藤田浩芳さんに話をしていただきます。

 藤田さんは先日ディスカヴァーの社長室ブログに、これまでのディスカヴァーの翻訳出版へのかかわり方についてお書きになっていました。当日はさらにくわしい話をうかがう予定です。このブログをご覧の多くのかたにとって、ディスカヴァーの独特のアプローチのしかた(翻訳出版にかぎらず)は大変参考になると思うので、よかったらお越しください。

・第1回の翻訳百景ミニイベント(5月24日、ゲストは夏目大さん)の録画は、こちらで観ることができます。時間は1時間余りです。

・第4回の翻訳百景ミニイベントの概要が決まりました。

  日時  8月23日(木)午後7時から8時45分

  会場  表参道駅近くのセミナールーム

  参加費  1,500円

  ゲスト  内藤文子さん、宮坂宏美さん、田中亜希子さん

 ゲストの3人は、以前この記事で紹介した「オズの魔法使いシリーズ」の新訳チームのみなさんです。また、やまねこ翻訳クラブの創立当時からのメンバーでもあり、児童書やYAの翻訳全般についてお話をうかがう予定です。

 第1回イベントでアンケートをとったところ、児童書やYAの翻訳関係者を呼んでもらいたいという声が最も多かったので、それを受けて依頼したしだいです

 参加を希望されるかたは、office.hyakkei@gmail.com 宛にメールでお申しこみください。

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・朝日カルチャーセンター東京・新宿教室の7月期は、8月4日、9月1日、9月22日の3回です。「文芸翻訳のツボ」は10時からの回(ここ )と15時15分からの回(ここ)のどちらか一方を受講してください。「英米小説の翻訳」は12時半からの回(ここ)のみです。どれも1時間半×3回です。

・大阪・中之島教室の10月期は、まだ正式な案内は出ていませんが、10月27日(金)に開講する予定です。いつもと同じく、「文芸翻訳のツボ」は10時から13時まで、「英米小説の翻訳」は14時から17時までです。

2012年7月 6日 (金)

INFORMATION 2012-07-06

 最近出た《CNN ENGLISH EXPRESS》8月号に、3ページ程度の巻頭インタビュー記事が載っています。語学関係の雑誌ですが、今回は語学より翻訳書の話がを心に話していて、最後の1ページでは読書探偵作文コンクールのことをくわしく紹介しました。

 その読書探偵作文コンクールですが、第3回となる今年は「真夏の読書探偵」として開催します。今週末に翻訳ミステリー大賞シンジケートのサイトに簡単な案内を出し、今月20日ごろから募集を開始します。小学生から高校生までが対象となりますので、お知り合いなどに教えてあげてください。詳細は後日また書きます。

 ディスカヴァーの社長室ブログに藤田浩芳出版部長が登場し、これまでのディスカヴァーの翻訳出版へのかかわり方についてお書きになっています。第3回の翻訳百景ミニイベントでは、さらにくわしい話をうかがう予定です。このブログをご覧の多くのかたにとって、ディスカヴァーの独特のアプローチのしかた(翻訳出版にかぎらず)は大変参考になると思うので、よかったらお越しください。

 

2012年7月 3日 (火)

INFORMATION 2012-07-03

・第3回翻訳百景ミニイベント(7月26日)は、すでにここで受けつけを開始しています。この回は主催がディスカヴァー・トゥエンティワンになるので、リンク先のサイトに記載されている要領でお申しこみください。当サイトでは受けつけていません。ディスカヴァーのサイトではわたしがゲストとして紹介されていますが、内容は第1回・第2回とほぼ同じ形式のロングバージョンで、後半はディスカヴァー出版部長の藤田浩芳さんに話をしていただきます。

・第1回の翻訳百景ミニイベント(5月24日、ゲストは夏目大さん)の録画は、こちらで観ることができます。時間は1時間余りです。

・第4回の翻訳百景ミニイベントの概要が決まりました。

  日時  8月23日(木)午後7時から8時45分

  会場  表参道駅近くのセミナールーム

  参加費  1,500円

  ゲスト  内藤文子さん、宮坂宏美さん、田中亜希子さん

 ゲストの3人は、以前この記事で紹介した「オズの魔法使いシリーズ」の新訳チームのみなさんです。また、やまねこ翻訳クラブの創立当時からのメンバーでもあり、児童書やYAの翻訳全般についてお話をうかがう予定です。

 第1回イベントでアンケートをとったところ、児童書やYAの翻訳関係者を呼んでもらいたいという声が最も多かったので、それを受けて依頼したしだいです

 参加を希望されるかたは、office.hyakkei@gmail.com 宛にメールでお申しこみください。

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・7月から8月にかけて、各地方の翻訳ミステリー読書会がつぎつぎおこなわれるので、ここに日程を整理しておきます。

 7月8日(日) 第2回千葉読書会(満席)

 7月21日(土) 第1回札幌読書会

 7月27日(金) 第7回大阪読書会

 7月28日(土) 第4回名古屋読書会 (満席)

 8月3日(金) 第6回福岡読書会

 8月18日(土) 番外編・福島「金田一耕助ウォーキング」

 先週から新たに第7回大阪読書会が加わりました。

 また、初開催の札幌読書会をどうぞよろしくお願いします。課題書はディック・フランシスの『大穴』。福島につづいて、一般のサイト読者のかたが立ちあげてくださったことを、とてもうれしく思っています。世話人の畠山さんによる特設サイト〈JUST FOR KICKS〉はここ。ツイッターアカウントは、技術的な理由で休止していましたが、新しいアカウント @shizuka_lat43N ができました

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・朝日カルチャーセンターの7月期の募集がはじまりました。東京・新宿教室も大阪・中之島教室も、「文芸翻訳のツボ」と「英米小説の翻訳」の2種類のクラスがあります。

  東京・新宿教室の7月期は、8月4日、9月1日、9月22日の3回です。「文芸翻訳のツボ」は10時からの回(ここ )と15時15分からの回(ここ)のどちらか一方を受講してください。「英米小説の翻訳」は12時半からの回(ここ)のみです。どれも1時間半×3回です。

 大阪・中之島教室の7月期は、7月7日の1回だけです。「文芸翻訳のツボ」は10時から13時まで(ここ)、「英米小説の翻訳」(ここ)は14時から17時までです。両クラスとも3時間×1回です。

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