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  • 越前敏弥
    文芸翻訳者。 いまのところ、更新は週1、2回程度です。 ご感想・お問い合わせなどは office.hyakkei@gmail.com へお願いします。
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2012年4月 9日 (月)

「なんでもわかるキリスト教大事典」

 待ちに待った日が訪れた、と言ってもけっして過言ではありません。

 絶版になっていた八木谷涼子さんの名著『知って役立つキリスト教大研究』の増補改訂版『なんでもわかるキリスト教大事典 (朝日文庫)』が先週末に刊行されました。「大事典」という名前から分厚く高価な本を想像する人もいるかもしれませんが、手軽で安価な文庫版です。しかし、内容はまさに「大事典」と呼ぶにふさわしい、翻訳関係者必携の1冊です。

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 この本の内容は、もともと《翻訳の世界》(と後続誌《eとらんす》)での連載がベースとなっています。ですから、そもそもが翻訳者や学習者からのさまざまな質問に答えていくことが記事の目的でした。その過程で、著者は数えきれないほど多くのキリスト教関係者への取材を重ねたと聞いています。そして何年もかけてその記事に加筆修正をして再構成し、2001年に書籍版が新潮OH!文庫から刊行されました。辞書として有用であるだけでなく、読み物としても非常におもしろかった『知って役立つキリスト教大研究』は、翻訳関係者のみならず、海外文化に興味のある本好きの人たちにも広く支持され、10刷りまで版を重ねましたが、新潮OH!文庫自体の終了にともない、2010年に絶版となってしまいました。

 わたし自身も、この本にはとうてい感謝しきれないほどお世話になりました。アンドリュー・テイラーの『天使の遊戯』『天使の背徳』『天使の鬱屈』の3部作も、そしてもちろん、ダン・ブラウンの『天使と悪魔』『ダ・ヴィンチ・コード』『ロスト・シンボル』も、この本がなければ翻訳できなかったと言ってもいいでしょう。『ダ・ヴィンチ・コード』の巻末では、推薦書の筆頭にこの本をあげてあります。

 それが今回、『なんでもわかるキリスト教大事典 (朝日文庫)』として復活したのは、すべての翻訳関係者にとっての朗報です。旧版より50ページ程度増えているというのもうれしい。ざっと見たところでは、比較的新しい教派の説明をいくつか加えたり、コラムをいくつか増やしたりというのが特に目立った加筆です。もちろん、諸情報を全面的に最新のものにしたという側面もあり、調べ物をする立場としてはほんとうにありがたい。英語と日本語の両方で詳細な索引がついていることや、「翻訳者や作家へのアドバイス」という項目が随所に見られることなど、旧版の長所はもちろん今回も引き継がれています。

 この本の存在をはじめて知った人も、旧版の読者のかたも、ぜひ手にとってみてください。この10年余り、わたしの仕事用パソコンのすぐ横にはずっと旧版が置いてありましたが、先週末についに交替しました。文字どおり座右の書です。

 著者の八木谷涼子さんのサイトはこちらです。

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